M&A(Mergers and Acquisitions)は、企業の成長や事業承継の手段として欠かせないものになっています。しかし、その裏側には透明性の問題や利益相反のリスクが潜んでおり、「光」の部分と「闇」の部分が共存しています。本記事では、M&A業界の課題と健全な取引を実現するためのポイントを解説します。
M&A業界の「闇」──不透明な手数料と利益相反
両手仲介の問題点──売り手と買い手、どちらの利益を守るのか?
M&A仲介業者の多くは、「両手取り(ダブルレップ)」という報酬体系を採用しています。これは、売り手と買い手の双方から手数料を受け取るビジネスモデルですが、この方式には利益相反のリスクがあります。
- 仲介業者は、できるだけ早く成約させることを優先しがち
- 本来の企業価値より安く売却させられる可能性がある
- 買い手側も、適正価格以上の金額を支払わされるケースがある
実例:相場より安価で売却されたケース
ある中小企業のオーナーがM&A仲介会社を利用し、自社を売却しようとしました。しかし、仲介業者は「早期成約」を優先し、買い手側に有利な条件で進めてしまいました。結果的に、オーナーは適正価格より30%も安い金額で会社を手放すことになりました。
M&Aは「企業の一生を決める取引」ですが、両手仲介では売り手・買い手双方にとって不利な条件で進められる可能性があるのです。
不透明な手数料体系──「成功報酬」の罠
M&A仲介業者の多くは、「成功報酬型」の手数料体系を採用しています。これは、一見すると合理的に思えますが、以下のような問題が発生します。
- 「レーマン方式」でも最低手数料の存在に注意
- 通常、取引金額の5%~10%が手数料として発生するが、最低手数料を設定いている業者が多く、売却価格が1億円でも最低手数料が2000万円だと、実質20%となってしまう。
- 両手取りを行うことで、買い手の買収資金の一部が仲介会社への手数料に充てられてしまうため、売り手の手取りは実質的にはその分減ってしまう。
- M&A業者によっては株式の譲渡価格に加えて、譲渡対象企業の負債額も足した金額に料率5%などをかける業者もおり、譲渡価格が1億円でも負債が2億ある企業だと、3億円に料率を掛けた金額が手数料となってしまう。
- 手数料の計算方法が不明瞭で、後から追加請求が発生するリスク
たとえば、不適切な業務運営が発覚し、M&A支援機関登録制度から取り消された事例もあります。こうした事態を避けるためには、契約時に手数料の仕組みを明確にすることが必須です。
M&A業界の「光」──信頼できるFA(フィナンシャルアドバイザー)方式
片手取りFAのメリット──クライアントの利益を守る
M&Aの透明性を確保するためには、「片手取り(FA方式)」を採用するのが理想的です。
- FAはクライアントの利益のみを追求できる
- 価格交渉の際も適正なアドバイスが可能
- 売り手・買い手のどちらか一方の立場に立つため、利益相反のリスクがない
たとえば、投資銀行や一部のM&Aアドバイザリー会社はFA方式を採用しており、クライアントの立場に立ったアドバイスを行っています。
成功事例:FAを活用して適正価格でM&Aを実現
ある企業オーナーは、仲介業者ではなくFAを雇い、売却を進めました。FAは、オーナーの希望を優先しながら最適な買い手を見つけ、交渉を行いました。その結果、市場価格より20%高い条件での売却が成功しました。
M&AのDX化──テクノロジーの活用で透明性向上
近年、M&Aプラットフォームの発展により、売り手と買い手が直接マッチングできるサービスが増えています。これにより、仲介業者を介さずに取引を進めることも可能になってきています。
- オンラインM&Aマッチングプラットフォーム
- 例:「TRANBI」「BATONZ」「M&Aクラウド」
- 企業情報をデータベース化し、適切な相手をマッチング
- 仲介手数料を抑えつつ、適正な価格でのM&Aを実現
今後の展望
テクノロジーを活用したM&Aは、従来の「闇」の部分を減らし、透明性を向上させる可能性があります。
まとめ──健全なM&Aを実現するために
M&A業界には、「光」と「闇」の両面があります。
- 「闇」:両手仲介の利益相反、不透明な手数料体系、早期成約の圧力
- 「光」:片手取りFA方式、M&Aプラットフォームの進化、DXによる透明性向上
M&Aを成功させるためには、適切なアドバイザーを選ぶことが重要です。
- 両手取りの仲介ではなく、片手取りのFA方式を選ぶ
- 契約前に手数料体系を明確に確認する
- テクノロジーを活用したM&Aプラットフォームを検討する
企業の未来を左右するM&Aだからこそ、透明性の高いプロセスを選び、「光」のある取引を実現することが求められます。


