特別買収目的会社(SPAC:Special Purpose Acquisition Company)は、事業を持たない「空白会社」として設立・上場し、その後に未公開企業を買収(または合併)することで上場企業としての地位を獲得するスキームです。従来型のIPOと比べて、短期間での資金調達や企業価値算定が可能であることから、米国を中心に近年注目が集まっています。SPAC上場は「SPAC IPO」「SPAC上場」「特別買収目的会社」といったキーワードで検索されることが多く、証券会社や企業の間で議論が活発化しています。
SPACの仕組み
SPAC上場の基本的な流れは以下のとおりです。
- 設立・スポンサー募集:著名な投資家やファンドがSPACのスポンサーとなり、設立資金を提供。
- SPAC上場(IPO):事前に買収候補を明示せず、投資家から資金を調達。
- 買収対象企業の選定・交渉:通常2年程度の猶予期間内に、未公開企業との買収(合併)を実行。
- De‑SPAC(買収完了):SPACと対象企業が合併し、対象企業が上場企業として存続。
- 未買収時の資金還元:買収が実施されなかった場合、投資家へ資金を返還。
米国SPAC市場の動向
- 急速な成長:2020年には248件、資金調達額75.5億USドルのSPAC IPOが実施され、De‑SPACも64件・89億USドルに達しました。2021年はさらに613件・162億USドルのSPAC IPOと、195件・465億USドルのDe‑SPACが成立し、市場規模は急拡大しました。
- 全体IPO市場への影響:SPAC上場件数は、2020年の米国IPO全体の約半数を占め、IPO手法として確固たる地位を築きました。
日本におけるSPAC上場導入の経緯
日本では成長戦略会議において2021年6月18日にSPAC上場解禁に向けた検討が正式に決定され、同年10月には東京証券取引所主催の「SPAC制度の在り方等に関する研究会」が開催されました。日本版SPACの導入にあたっては、米国制度のメリットを踏まえつつ、投資家保護や市場特性に合わせた独自ルールの策定が求められています。
SPAC上場の要件
日本版SPAC上場にあたって想定される主な要件は次のとおりです(米国実務例を参照)。
- 独立役員承認:SPACの取締役会は過半数が独立役員で構成されることが一般的とされ、上場制度上も承認要件となる見込みです。
- De‑SPAC要件:買収対象企業の規模要件や、調達資金の80%以上を公正価値のある案件に充当することなどがプラクティスとして定着しています。
- スポンサー・ロックアップ:スポンサー保有株式は上場時発行済株式総数の20%以内、De‑SPAC完了後は一定期間(通常6ヵ月~1年)の売却制限が課せられます。
SPAC上場のメリット
- 短期間での上場:従来のIPOでは6ヵ月以上要する審査・プロセスが、SPACでは2~3ヵ月程度で完了するケースがあります。
- 企業価値の早期確定:SPAC上場時に調達価格で企業価値が確定するため、資金計画が立てやすいというメリットがあります。
- PIPE投資の活用:De‑SPAC時に第三者割当増資(PIPE)が行われることで、追加資金調達が可能です。
SPAC上場のデメリット
- 高い手数料負担:スポンサーへの報酬(通常調達額の約20%)や投資銀行手数料等、伝統的IPOより費用が高くなる場合があります。
- 投資家リスク:買収先企業の業績予測が難しく、SPAC合併後に株価が公募価格を下回る例も多く見られます。
- 情報開示の課題:SPAC上場時に詳細情報が開示されないため、投資家が事後判断を迫られるリスクがあります。
注意点と投資家保護
SPAC制度導入にあたっては、以下の点に留意する必要があります。
- 償還請求権の明確化:投資家がSPAC買収未実施時に資金還元を請求できる権利を確実に担保すること。
- スポンサー利益相反管理:合併価格設定や情報開示において、スポンサーと一般投資家の利益相反を防止する制度設計。
- 適切な情報開示:買収発表時点での財務情報や事業計画を詳細に開示し、投資判断に資する環境づくり。
事例紹介(米国)
- DraftKings:2019年にSPACを通じて上場し、スポーツベッティング市場で急成長を遂げた例。
- Virgin Galactic:2021年にSPAC合併で上場し、宇宙旅行ビジネスへの注目を集めた。
- MultiPlan:ヘルスケア請求管理企業としてSPAC上場後、買収先企業の選定が迅速に進んだ事例。
まとめ
SPAC上場は、従来のIPOとは異なるメリット・デメリットを併せ持つ新たな資金調達・上場スキームです。特に米国市場では2020~2021年にかけて急拡大し、その後の市場調整も進行中です。日本版SPAC導入にあたっては、投資家保護や情報開示の強化、スポンサー利益相反管理といった制度設計が鍵となります。今後の規制動向や市場の変化に注視しながら、自社の資本戦略に最適な手法を検討しましょう。


