コバルト・銅・モリブデンを巡る世界資源争奪戦の最前線
2025年8月25日、中国の非鉄鉱山大手CMOC(China Molybdenum Group/中国鉱業資源公社)は、アフリカおよび南米におけるさらなるM&A(合併・買収)機会を模索していると表明しました。同社はすでにコンゴ民主共和国(DRC)の銅・コバルト鉱山やブラジルのニオブ資産を保有し、中国企業の中でも最も積極的に海外展開を進めてきました。
2024年の過去最高益を背景に、潤沢な資金力を持つCMOCは、アフリカと南米を次なる拡張先と位置づけ、戦略金属の供給網をグローバルに広げる方針です。本記事では、CMOCの現状、狙う鉱種と地域、そして地政学リスクを含む今後の展望を徹底的に解説します。
CMOCの企業概要と強み
世界的な資源プレイヤー
CMOCは、中国を拠点とする世界有数の非鉄鉱山会社で、以下の分野で世界トップクラスのシェアを誇ります。
- モリブデン・タングステン:耐熱合金や特殊鋼に欠かせない戦略金属
- 銅・コバルト:電気自動車(EV)用バッテリーや再生可能エネルギー分野で需要急増
- ニオブ・リン:特殊鋼や肥料産業で利用
特にコバルトの生産量は世界シェアの約30%に達し、電池産業サプライチェーンにおける存在感は突出しています。
財務基盤
- 2024年売上高:約2,130億元(前年比14%増)
- 純利益:約135億元(前年比64%増)
- 高い利益率と低コスト生産を背景に、今後のM&A余力を十分に備えている
これまでのM&A実績
CMOCは過去10年で積極的にグローバルM&Aを展開してきました。
- コンゴ民主共和国(DRC)
- テンク・フングルメ鉱山(TFM)を運営し、世界最大級の銅・コバルト鉱山の一角を占有
- Kisanfu鉱山への投資でEVバッテリー素材供給力を拡大
- ブラジル
- ニオブ鉱山(Boa Vista鉱山)およびリン鉱山を保有
- 南米での戦略金属確保を強化
- 2025年初頭
- カナダ上場のLumina Goldを完全買収し、金資産にも参入
新たなM&A戦略:アフリカと南米
CMOCは今後、アフリカおよび南米においてさらなるM&Aを計画中です。注目されるターゲットは以下の通りです。
アフリカ
- DRCでの追加資産:既存の銅・コバルト鉱山を補完するプロジェクト
- ザンビアやナミビア:銅や希少鉱物に強みを持つ新興案件
南米
- ブラジル:既存資産とのシナジーを見込んだリン鉱石やニオブ鉱山
- チリ・ペルー:世界最大級の銅供給国であり、新たな提携先となる可能性が高い
中国国家戦略とのリンク
CMOCの海外M&Aは単なる企業戦略にとどまらず、中国の資源安全保障政策の一環でもあります。
- EV・再エネ産業:コバルト・銅・リチウムはサプライチェーンの生命線
- 「一帯一路」構想:アフリカ・南米の資源国との外交を強化
- 脱ドル決済:中国人民元建て資源取引の拡大にもつながる可能性
リスクと課題
政治・規制リスク
- DRCでの輸出規制やロイヤルティ増税
- 南米諸国における資源ナショナリズム(チリの国有化論など)
ESG(環境・社会・ガバナンス)
- 鉱山労働者の安全問題や環境破壊リスク
- 欧米市場での「資源の中国依存」批判
市場リスク
- コモディティ価格の変動(コバルトは特にボラティリティが高い)
- EV市場成長の鈍化による需要減速
今後の展望
- 短期(2025〜2026年)
- 南米・アフリカでの新規買収案件の実現可能性が高い
- 金属市況の好転を追い風に積極投資
- 中期(2027〜2030年)
- 世界トップ3鉱業企業への浮上
- 中国のEV産業と一体化した資源供給体制を確立
- 長期(2030年以降)
- 「グローバル資源覇権企業」として、BHPやリオ・ティントに並ぶ規模に成長
まとめ
CMOCが打ち出したアフリカ・南米でのM&A戦略は、電動化・再生可能エネルギー時代の鉱物資源をめぐる覇権争いの象徴です。強固な財務基盤を持つ同社は、今後も積極的な買収で資源ポートフォリオを拡大し、中国の産業戦略と歩調を合わせて世界市場における存在感を一層高めるでしょう。
ただし、地政学リスクや環境・社会課題を無視すれば国際的な反発を招きかねず、CMOCの今後の展開は「持続可能性」と「戦略的拡張」の両立が試される局面となります。


