無料相談

ウェッジHD、子会社4社をタイP.P. Coral Resortへ譲渡——「事業整理」の裏で続く昭和HDの経営権争い

ウェッジHD、子会社4社をタイP.P. Coral Resortへ譲渡——「事業整理」の裏で続く昭和HDの経営権争い M&Aニュース

ウェッジホールディングス(東証グロース・2388)は7月17日、株式会社日本橋本町菓子処、明日香食品株式会社、昭和ゴム株式会社、株式会社ルーセントの4社の株式を、タイ・バンコクのP.P. Coral Resort Co., Ltd.(以下PPC)に譲渡した。譲渡価額は日本橋本町菓子処が約4,400万円、明日香食品が約7,700万円、昭和ゴムが約848万円、ルーセントが約48万円。4社合わせて約1億3,000万円である。

開示上の説明は「コア事業であるコンテンツ事業に人的・資金的リソースを集中させるため」。それ自体は、よくある子会社整理の文面だ。

ただ、この開示だけを読んで「ウェッジHDが事業を整理した」と受け取ると、本筋を見落とす。譲渡された4社は、つい3週間前まで昭和ホールディングス(東証スタンダード・5103)の連結子会社だった会社であり、その昭和HDは譲渡当日の7月17日、会社更生手続の申立てを受けている。今回の取引は、昭和HDの経営権と資産を巡って続く争いのただ中で行われたものだ。

譲渡先は「まったくの第三者」ではない

PPCはタイ・ピピ島の高級リゾート「Zeavola Resort」を運営する会社で、2025年4月30日までウェッジHD自身が持分を保有する持分法適用関連会社だった。ウェッジHDは昨年、リゾート事業からの撤退としてPPCとEngine Property Management Asiaの2社の持分を譲渡している。

つまり今回の譲渡先は、1年余り前までウェッジHDグループの一員だった会社ということになる。買い手の素性としてこの点は押さえておきたい。

3週間で何が起きたか

時系列を並べると、この譲渡の位置づけが見えてくる。

  • 6月26日 昭和HDが、連結子会社だったウェッジHDと日本橋本町菓子処から借入金の担保権(質権)を行使され、ウェッジHD、日本橋本町菓子処、明日香食品、昭和ゴム、ルーセント、明日香の計6社が連結から外れたと開示。今回売られた4社の株式は、このときウェッジHD側に移った。
  • 6月29日 昭和HDの第125回定時株主総会で、代表取締役・此下竜矢氏を含む取締役3名の再任が否決される。以後、同社は代表取締役を選定できない状態が続き、実印・会計帳簿・預金通帳の所在が分からなくなっていると自ら開示した。
  • 7月13日 東京地裁が、ウェッジHDと日本橋本町菓子処を債務者として、昭和HDが保有していた子会社株式等の処分を禁止する仮処分命令を発令。申し立てた昭和HDの現経営陣側は、権限のない旧代表取締役が結んだ根質権設定契約は無効だと主張している。
  • 7月14日 ウェッジHDは「仮処分命令の通知は届いておらず、詳細は不明」とする開示で応じた。
  • 7月17日 ウェッジHDが4社株式をPPCへ譲渡。同じ日、シンガポールのJトラスト・アジアが昭和HDに対する会社更生手続を東京地裁に申し立て、保全管理命令が出た。保全管理人には岩崎晃弁護士が選任されている。負債は約22億円。

処分禁止の仮処分が公表されてから4日後に、株式は国外の会社へ譲渡された。この順序が、今回の取引の最大の論点だ。

対立の根は9年前にさかのぼる

昭和HD(旧・昭和ゴム)とウェッジHDは、タイのAPF(Asia Partnership Fund)グループが2007〜2008年に相次いで傘下に収めた会社だ。APFを率いる此下益司氏の陣営と、Jトラスト側の対立は、旧連結子会社Group Lease PCLを巡る訴訟に端を発し、2017年ごろから国内外の裁判所で争われてきた。Jトラスト・アジアは2020年、この訴訟で約74億円規模の損害賠償請求権を得ており、今回の会社更生申立てもこの債権を根拠にしている。

昭和HD側の開示によれば、千葉地裁は2025年9月26日、此下氏が同社取締役の地位にないことを確認する判決を出している。今年6月の総会での再任否決と合わせ、此下氏側は昭和HD本体の経営から外れつつあった。その局面で、グループの事業会社4社の株式が担保権行使によってウェッジHDへ移り、3週間後に海外へ譲渡された、というのがここまでの経過である。

この譲渡をどう読むか

昭和HDの現経営陣側から見れば、担保権行使の前提となった質権設定自体が無効であり、4社の株式はそもそもウェッジHDのものではない、ということになる。仮処分はまさにそれを止めるための手続きだった。一方のウェッジHDは、担保権行使も譲渡も正当な取引であり、事業集中の一環だという立場を崩していない。

譲渡価額が4社合計で約1.3億円にとどまる点、譲渡先が旧グループ会社である点、仮処分の公表直後というタイミング。これらを踏まえ、市場関係者の間では、昭和HDの更生手続で資産が現経営陣側・債権者側の手に渡る前に、グループの事業会社を国外へ移す動きではないかとの見方も出ている。もっとも、これはあくまで一方の陣営の主張に沿った見立てであり、質権設定や譲渡の効力が最終的にどう判断されるかは、今後の裁判所と更生手続に委ねられている。更生手続では管財人が過去の資産移転の効力を争う制度もあり、この譲渡が確定的なものと言い切れる段階ではない。

昭和HDの株式は現在も上場を維持しているが、代表不在のまま更生手続入りするという、上場会社としては異例ずくめの展開が続く。続報があり次第、追って伝える。


出典

M&A情報ならMANDAをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む

タイトルとURLをコピーしました