情報戦略テクノロジー(証券コード:155A)が、ITコンサルティング企業のFlybyおよびその親会社であるFlyby Managementの株式を取得し、両社を子会社化することを決定しました。上流のコンサルティングから実装・運用保守まで一貫してDXを支援する体制を一段と強化する狙いがあります。
情報戦略テクノロジーとはどのような会社か
情報戦略テクノロジーは、システム開発とITコンサルティングを主軸に置く企業です。同社が掲げる「0次DX」という言葉が、今回のM&Aを読み解く上でのキーワードになります。
0次DXとは、多重下請け構造を介さずに顧客と直接向き合い、課題の本質から共に考えることで本質的なデジタル変革を推進するアプローチです。SIer業界で長年続いてきた多重下請け構造への問題意識が色濃く反映された思想と言えます。ツールの導入やシステムの刷新を「DX」と呼ぶ慣習をあえて疑い、組織変革そのものに踏み込もうとする姿勢は、同業他社との明確な差別化軸になっています。
Flybyが持つ競争力の源泉はどこにあるのか
買収対象となるFlybyは、ソフトウェア開発・ITコンサルティング・運用保守サービスを手がける企業です。注目すべきは、その強みが「コンサルもできる開発会社」という域を超えている点にあります。
DX推進、業務システムの再構築、IT内製化支援において実績を積んでおり、上流のコンサルティング領域からソフトウェア開発まで切れ目なくつなぐノウハウを有しています。「上流が強いがものが作れない」「開発は速いが戦略が描けない」という二項対立を克服しているケイパビリティは、市場でも希少です。
また、Flyby Managementはその代表取締役の資産管理会社であり、Flybyの株式を支配的に保有する親会社です。今回の取引構造を理解するうえで、この二社の関係を把握しておくことが不可欠です。
今回の取引スキームをどう読むか
本M&Aのスキームはシンプルではありますが、二段構えの構造になっています。ここがポイントです。
情報戦略テクノロジーは、まずFlybyが発行する株式のうちFlyby Managementが保有する分を除く全部または一部を取得します。しかし同時に、Flyby Managementの全株式を取得することで、Flyby Managementが持つFlyby株式を間接的に支配します。結果として、直接・間接の保有を合算することでFlybyを実質的に完全支配する構造となります。
直接保有比率だけを見ると少数株主のような数字に見えますが、実態は完全支配です。資産管理会社を通じた間接保有構造は、オーナー経営者を持つ中小規模のIT企業の買収において頻繁に用いられる手法であり、今回もその典型的なケースです。
なぜ今このタイミングで子会社化に踏み切ったのか
IT内製化支援の需要が急伸しています。デジタル競争が激化する中、自社内にエンジニアリング組織を持ちたいと考える企業が増えており、外部パートナーにも「要件定義だけ」「開発だけ」ではなく、組織変革まで伴走することが求められるようになっています。
見落とされがちですが、こうした「コンサルと開発の一体化」ニーズに応えられる企業は国内でも限られています。大手SIerは大企業向けの大規模案件に最適化されており、数十人規模のDXチームを中堅企業に常駐させるような機動的な対応が構造上難しい。一方、中小の開発会社は現場実装力はあっても、経営課題を起点に戦略を描くコンサル機能を内製化しきれていない。情報戦略テクノロジーとFlybyはともに、その隙間市場を主戦場としてきました。
情報戦略テクノロジーが0次DXの理念を実現するには、コンサルティングの深度と開発のスピードを同時に高めることが不可欠です。Flybyが持つコンサルティング能力と開発の実行力はその欠けたピースとして機能すると、公式発表においても明言されています。理念の共鳴と市場タイミングの合致が、この案件を生んだ背景と言えます。
「0次DX」とFlybyの思想はなぜ共鳴するのか
情報戦略テクノロジーは今回の子会社化の目的として、「Flybyが持つ高度なITコンサルティング能力とアジャイル開発の実行力が自社の掲げる『0次DX』の思想と強く共鳴する」と明言しています。この「共鳴」という言葉の選択は意味深です。
単なる機能補完や規模拡大ではなく、顧客の潜在能力を引き出す「共創パートナー」としての機能を志向している点に、この買収の本質があります。コンサルとシステム開発を別々の会社が担うと、顧客は必ずどこかで「板挟み」になります。情報戦略テクノロジーはFlybyを傘下に収めることで、その断絶を構造的に解消しようとしています。
株価・競合・業界への影響をどう読むか
情報戦略テクノロジーは東証に上場しており(証券コード:155A)、今回のM&A発表が投資家にどう映るかは注目点の一つです。DX内製化支援という成長市場への明確なコミットメントは、中長期の成長シナリオとして市場に評価されやすい材料です。
競合他社への影響も無視できません。上流コンサルから実装・保守までをグループ内で完結できる体制は、提案の競争力を直接高めます。特に、中堅企業のDX案件を争う競合にとっては、情報戦略テクノロジーグループの「提案の厚み」が増すことへの警戒感が生じるはずです。
このM&Aが抱えるリスクと懸念点
PMI(Post Merger Integration=経営統合プロセス)の成否が最大の課題です。コンサルティングファームとシステム開発会社は、組織文化・評価制度・案件の進め方が根本から異なることが多く、統合後に人材が流出するリスクは現実的に存在します。
Flybyの強みはまさに人的資本に依存しています。上流コンサルを担うシニアコンサルタントや、アジャイル開発を率いるエンジニアが離れれば、買収の価値は大きく毀損します。株式取得実行までの準備期間に、キーパーソンとの関係構築と処遇設計を丁寧に進められるかが問われます。
また、Flyby Managementがオーナー代表の資産管理会社である以上、現経営者のエグジット後の経営体制をどう設計するかも重要です。Flybyのような専門人材主体の組織では、創業者がコアクライアントとの窓口を一手に担っている場合も多く、その属人性をいかにチームや制度へ移管できるかが、ガバナンス設計の核心になります。開示情報だけでは見えないこの部分こそ、PMI設計の質を問う試金石です。
類似の業界再編と比べて何が違うのか
ITコンサルとシステム開発の融合型M&Aは、2010年代後半から国内外で相次いで起きました。大手コンサルティングファームがデジタルエージェンシーや開発会社を次々と傘下に収め、コンサルと実装の一体型モデルを確立する動きは広く知られています。
ただし、大手ファームと今回の案件が根本的に異なるのは「規模とターゲット顧客層」です。情報戦略テクノロジーが向き合う顧客は、大手コンサルが主戦場とする大企業ではなく、中堅・中小規模の企業です。その層では、提案品質よりも「伴走してくれるか」「現場まで一緒に考えてくれるか」が選ばれる理由になります。0次DXという思想は、そのニーズに正面から応えるものです。
今後の注目点はどこにあるのか
まず確認すべきは、株式取得実行の完了です。両社の統合後、グループとしての初期的な案件実績がどのような形で示されるかが、M&Aの効果を測る最初の試金石になります。
また、Flybyの既存顧客への影響も見ておく必要があります。グループ入りによって提供できるサービスの幅が広がる一方、独立系コンサルとして取引していた顧客が関係を見直す可能性もゼロではありません。グループブランドへの統合ペースと、既存顧客関係の維持をどう両立するかが、PMI設計の核心になるはずです。
まとめ——この子会社化が示す業界の変化
情報戦略テクノロジーによるFlybyの子会社化は、単なる規模拡大ではありません。中堅・中小企業向けDX支援において、コンサルティングと開発実装を一体提供できる体制を整えることで、業界の競争軸そのものを塗り替えようとする戦略的な一手です。
0次DXという思想を実現するための最後のピースとして、Flybyを選んだ判断は戦略的に一貫しています。株式取得実行後、PMIの巧拙が統合効果を左右する局面で、両社がどのように「共創」の実態を作り上げていくか、引き続き注目が必要です。
Q&A
情報戦略テクノロジーはFlybyの株式を何%取得するのですか?
Flyby Managementの全株式を取得することで間接保有分を含めたFlybyへの議決権所有割合は最大100.0%となります。直接保有分はFlyby Managementが保有する分を除く株式の取得にとどまるため、直接の議決権所有割合は最大19.1%です。
今回の子会社化はいつ完了する予定ですか?
株式譲渡契約の締結は2026年8月13日に行われており、株式取得実行日は2027年1月が予定されています。
Flyby Managementとはどのような会社で、なぜ買収対象に含まれているのですか?
Flyby ManagementはFlybyの代表取締役の資産管理会社であり、Flybyの議決権の80.9%を保有する親会社です。Flybyを実質的に支配しているため、Flybyの完全子会社化にはFlyby Managementの全株式取得が不可欠です。
このM&Aの主な目的は何ですか?
経営課題の抽出からシステムの実装・運用保守に至るまでを一気通貫で支援する高付加価値なDX内製化支援サービスの提供体制を強化することが目的です。情報戦略テクノロジーが掲げる「0次DX」の思想とFlybyのコンサルティング・開発力の融合を狙っています。
Flyby Managementが保有するFlyby株式はどのように扱われますか?
情報戦略テクノロジーはFlyby Managementの全株式を取得します。これによりFlyby Managementを子会社とし、同社を通じてFlybyの議決権80.9%を間接的に保有する構造となります。


