無料相談

BysideとMATCH POINT業務提携——医療・介護M&A特化「ヘルスケア支援室」新設の真相

医療・介護M&Aを支援するヘルスケア支援室のイメージ M&Aニュース

M&AアドバイザリーのByside株式会社は、医療・介護M&Aの専門家集団である株式会社MATCH POINTと業務提携し、2026年9月1日付で「ヘルスケア支援室」を新設しました。同室の室長には、病院・診療所・介護施設を合わせた累計400件超の成約実績を持つMATCH POINT代表取締役・谷口慎太郎氏が就任しています。後継者不在による医療機関の休廃業が過去最多水準で続く中、この提携が地域医療にとって何を意味するのか、詳しく読み解きます。

Byside株式会社とはどのような会社か

Byside株式会社は、2022年7月設立、東京都千代田区に本社を置くM&Aアドバイザリー会社です。代表取締役は川畑勇人氏。同社の最大の特徴は、業界でも珍しい「買い手企業に特化したM&Aアドバイザリー」というポジショニングです。

通常のM&A仲介では、売り手・買い手双方の利益を調整する立場をとります。それに対してBysideは、買い手側の戦略的ニーズを深く理解したうえで候補企業を探索する「買い手探索特化型モデル」を採用しています。案件ありきで買い手を探すのではなく、買い手企業の成長戦略に合致する案件を能動的にソーシングする点が、同社の独自性の核心です。

注目すべきは、この設計思想がそのままヘルスケア支援室の強みにも直結するという点です。医療・介護の譲渡案件において「どこに売るか」よりも「誰に引き継ぐか」が地域医療の存続を左右するとすれば、買い手理解に強みを持つBysideの参入には明確な必然性があります。

MATCH POINTと谷口慎太郎氏が持つ圧倒的な専門性

ヘルスケア支援室の室長に就任した谷口慎太郎氏のキャリアは、医療・介護M&Aの歴史とほぼ重なります。東京三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、外資系投資銀行やヘルスケア投資ファンドでの投融資業務、病院事務長としての医療機関再生業務を経て、2009年に日本M&Aセンターへ入社。医療介護専門チームの責任者・執行役員として多数の案件を手掛けました。

その後、fundbookでヘルスケア専門組織の責任者として取締役を務め、MATCH POINTを設立。医療・介護M&Aに特化したアドバイザリーサービスを展開しています。著書『病医院・介護施設のM&A成功の法則』(日本医療企画)は、業界関係者の間で実務書として広く参照されています。

ここがポイントです。医療・介護M&Aは許認可対応、行政手続き、診療報酬・介護報酬をふまえた事業譲渡スキームの設計など、一般的なM&Aとは異なる専門知識が不可欠です。400件という実績は単なる数字ではなく、こうした複雑な実務を反復してきた経験の蓄積を意味します。

なぜ今、医療・介護M&Aに特化した組織が必要なのか

帝国データバンクの調査によると、2025年度の医療機関(病院・診療所・歯科医院)の休廃業・解散件数は823件と過去最多を更新し、10年前と比較して約2.3倍に増加しています(株式会社CBヘルスケア「2026年最新版 医療・介護業界M&A動向と売却相場」より)。

東京商工リサーチの調査では、2026年上半期(1〜6月)に倒産した医療機関は38件(前年同期比15.1%増)で、2006年以降の上半期では過去2番目の高水準に達しています。倒産理由の最多は「後継者難」です。同調査によれば、経営者が60代の企業では約46%、70代では約31%が後継者不在の状態にあります。

見落とされがちですが、この問題の本質は「経営が悪化しているから廃業する」のではなく、「経営は健全でも引き継ぐ人がいないから消えていく」という点にあります。赤字だから閉院するのではなく、黒字でも後継者がいないから地域医療のインフラが失われる——この構造的な矛盾こそが、M&Aによる第三者承継の需要を押し上げている根本要因です。

ヘルスケア支援室の仕組みと「買い手特化」が生む差別化

ヘルスケア支援室は、Bysideが提携するM&A事業者から紹介を受けた医療・介護領域の譲渡案件に対し、Bysideの専門チームとMATCH POINTの谷口氏らが連携してソーシング・実行支援を行う体制を採っています。

機能の分担は明確です。

  • Byside側:買い手企業に対する深い理解とマッチング力。地域医療の担い手となる候補企業を買い手の成長戦略に照らして探索・提案する
  • MATCH POINT(谷口氏)側:許認可対応、行政手続き、診療報酬・介護報酬をふまえた事業譲渡スキームの設計など、医療・介護業界特有の実務知見

この掛け合わせが実効的かどうか、冷静に考えてみる必要があります。医療・介護M&Aにおいて支援者の不足が指摘されてきた背景には、「業界知見がある人材はマッチング力に乏しく、マッチング力がある組織は業界知見に欠ける」という二項対立がありました。今回の提携はその両軸を意図的に結合しようとするモデルであり、構造的な合理性があります。

業界の「常識」を疑う——仲介型モデルへのアンチテーゼ

M&A業界の標準的なビジネスモデルは、売り手・買い手双方から手数料を受け取る仲介型です。このモデルは案件の成約そのものにインセンティブが生じるため、「誰に引き継ぐか」よりも「いかに成約させるか」に重心が傾く構造的なリスクをはらんでいます。

Bysideが採用する「買い手特化型」は、この業界慣行への明確なアンチテーゼです。買い手の成長戦略に沿った案件のみを持ち込むことで、マッチングの精度を高める設計になっています。医療・介護という社会インフラのM&Aにおいては、「成約後に地域医療が本当に維持されるか」という視点が特に重要です。この文脈で買い手特化モデルを採用する意味は、一般的な産業領域以上に大きいと筆者は見ています。

医療・介護M&Aが持つ固有のリスクと障壁

医療・介護のM&Aは、一般的な中小企業M&Aと比べて固有の複雑性を持ちます。主なポイントを整理します。

  • 許認可の問題:医療法人の場合、都道府県知事の認可が必要で、承継の形態によって手続きが大きく異なります。事前の行政折衝が成否を左右することも少なくありません
  • 診療報酬・介護報酬の継続性:承継後も報酬請求が適切に継続できるかどうか、スキーム設計の段階から見極める必要があります
  • 医師・看護師・介護士の確保:承継後に人材が離散するケースは珍しくなく、PMI(統合後のマネジメント)の難易度が高い分野です
  • 地域住民・行政との関係性:地域医療の担い手であるがゆえに、株主だけでなく地域コミュニティへの説明責任が生じます

こうした障壁の存在が、支援できるアドバイザーを限定してきた理由でもあります。谷口氏の400件超という実績は、これらの障壁を実務として乗り越えてきた証左に他なりません。

地域医療「再生・創生」という目標が示す野心

Bysideのリリースでは、ヘルスケア支援室の目標として「地域医療の再生・創生」という言葉が使われています。単なる「事業承継の実現」にとどまらない、という明示的な意思表示です。

川畑代表取締役は「地域医療を『守る』だけでなく、この先も続いていく形に『創り直す』」と述べています。この言葉の含意は、既存の医療機関をそのまま引き継ぐだけでなく、買い手企業の成長戦略と結びつけることで、承継後の医療・介護サービスの質や持続可能性を高める支援まで視野に入れているということです。

谷口氏も「『誰に承継するか』というマッチングの質が、その後の地域医療の未来を大きく左右する」と語っています。M&Aの成約はゴールではなく、地域医療の持続に向けたスタートラインだという認識が、ヘルスケア支援室の設計思想の根底にあります。

競合環境と今回の提携が持つ戦略的な位置づけ

医療・介護M&A市場には、大手M&A仲介会社が専門チームを設けて参入している一方、独立系の専門アドバイザーも存在します。ただし、医療・介護特有の実務知見を持つアドバイザーの絶対数は少なく、需給ギャップが生じている分野です。

今回のByside×MATCH POINTの提携が興味深いのは、独立した専門家(MATCH POINT)と買い手特化型FA(Byside)という、性質の異なる二つのプレーヤーが補完関係を築いた点です。大手M&A仲介会社が社内に専門部門を持つのとは異なり、外部提携によって柔軟にスペシャリストを組み込むモデルは、小回りを活かした案件対応を可能にします。

医療・介護業界のM&A案件は地域性が強く、全国一律の対応ではなく個別案件ごとの深い関与が求められます。この特性に対して、独立系の専門家と組むアプローチは一定の有効性を持つと筆者は見ています。

今後の注目点——ヘルスケア支援室の成否を左右する三つの要素

ヘルスケア支援室が実効的な支援機能を発揮できるかどうかは、以下の三点にかかっています。

  • 買い手候補企業のネットワーク深度:地域医療の担い手になれる買い手企業——医療法人、介護事業者、医療関連企業——をどれだけ組織的に持っているかが、マッチング精度を決定づけます
  • 案件ソーシングの仕組み:Bysideが提携するM&A事業者からの紹介を起点にするとされていますが、案件供給の量と質をどのように安定させるかが継続的な課題となります
  • PMI支援への関与度:成約後の医療・介護サービス継続を「地域医療の再生・創生」として位置づけるなら、クロージング後の統合支援にどこまで関与するかが問われます

「地域医療・介護の再生・創生に積極的に取り組む」という方針を掲げる以上、成約件数だけでなく、承継後の医療機関・介護事業者の状況にまで責任を持つ姿勢が長期的な信頼につながるはずです。

まとめ——構造課題に正面から向き合う提携の意義

BysideとMATCH POINTによるヘルスケア支援室の新設は、後継者不在という医療・介護業界の構造課題に対する、機能的に分化した回答です。買い手理解に強みを持つBysideと、400件超の実務実績を持つ谷口氏という組み合わせは、「誰が承継するか」の精度を高めることに主眼を置いた設計になっています。

2025年度の医療機関休廃業・解散件数が823件と過去最多を更新する中、M&Aによる第三者承継は地域医療インフラを守るための現実的な手段として重要性を増しています。単なる事業売買ではなく、地域医療の持続可能性を視野に入れたマッチングを実現できるかどうか——その問いへの答えが、ヘルスケア支援室の存在価値を決めることになります。

Q&A

ヘルスケア支援室はいつ設立され、どのような案件を対象としていますか?

2026年9月1日付で設立されました。Bysideが提携するM&A事業者から紹介を受けた医療・介護領域の譲渡案件(病院・診療所・介護施設など)を対象に、ソーシングから実行支援までを担います。

谷口慎太郎氏の医療・介護M&Aにおける実績はどの程度ですか?

医療・介護領域における成約実績は累計400件を超えており、日本M&Aセンターでの医療介護専門チーム責任者・執行役員、fundbookでのヘルスケア専門組織取締役を歴任した後、MATCH POINTを設立しています。

BysideとMATCH POINTの役割分担はどうなっていますか?

Bysideは買い手企業に特化したマッチング力を担い、MATCH POINTの谷口氏は許認可対応・行政手続き・診療報酬や介護報酬をふまえた事業譲渡スキームの設計など、医療・介護業界特有の実務知見を提供します。

医療・介護業界で後継者不在問題はどの程度深刻ですか?

帝国データバンクの調査によると2025年度の医療機関の休廃業・解散件数は823件と過去最多で、10年前比で約2.3倍に増加しています。東京商工リサーチの調査では、2026年上半期の医療機関倒産38件のうち倒産理由の最多が「後継者難」です。

Bysideの「買い手特化型」モデルは通常のM&A仲介とどう違うのですか?

通常のM&A仲介が売り手・買い手双方から手数料を受け取るのに対し、Bysideは買い手企業の成長戦略を深く理解したうえで案件をソーシングする買い手特化型を採用しています。医療・介護M&Aでは「誰に引き継ぐか」の精度が地域医療の存続を左右するため、この設計に戦略的な合理性があります。

M&A・事業承継のご相談はMANDAがお薦め

仲介ではなく“あなた専属”のM&Aサービス!
利益相反のない「片側FA方式」を、ぜひ一度ご体験ください。
完全成功報酬で、成約まで手数料無料です。

この記事を書いた人
MANDA編集部 森田

なにかと課題の多いM&A業界を民主化し、日本の未来を大きく左右する「事業承継問題」を解決することが、私たちのミッションです。M&Aをこれから始める方から、M&Aのプロフェッショナルの方まで、M&A周りを判りやすく丁寧に解説します。

M&Aニュース
この記事をシェアする!

M&A情報ならMANDAをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む

タイトルとURLをコピーしました