M&Aキャピタルパートナーズ株式会社(MACP)が、LSEG(ロンドン証券取引所グループ)の発表した「日本M&Aレビュー 2026年上半期(1〜6月期)」において、案件数ベースの主要3部門すべてで第1位を獲得しました。「国内案件」「日本企業関連 公表案件」「日本企業関連 完了案件」という国内M&Aを測る最も重要な3つの指標での同時制覇は、単なる好決算報告を超えた業界構造の変化を示しています。そしてこの結果は、プレスリリースが「圧倒的1位」と表現するほどの格差をもって達成されたものです。
LSEGリーグテーブルとは何か——その権威と読み方
リーグテーブルとは、一定期間における金融機関のM&Aアドバイザリーや引受業務の実績をランキング形式で示したものです。証券会社や投資銀行にとっては営業力の証明書であり、クライアントが顧問先を選定する際の有力な判断材料にもなります。
注目すべきは、このランキングを発表しているのがLSEG(ロンドン証券取引所グループ)という点です。LSEGはかつてRefinitivとして知られていた金融データ部門を傘下に持ち、M&Aリーグテーブルの分野では世界標準の地位を占めています。Bloomberg等の競合データプロバイダーとも並び称される中で、LSEGのリーグテーブルが業界で特に重視されるのは、集計対象・除外基準・案件カウントのルールが長年にわたり一貫しており、各社横断での比較可能性が高いためです。国内企業が「自社調べ1位」と主張するランキングとは性格が根本的に異なります。第三者機関による客観的な評価だからこそ、業界内外での信頼性が高いのです。
今回MACPが1位を獲得した3部門は以下の通りです。
- 国内案件 アドバイザー上位5位 案件数ベース/不動産案件を除く
- 日本企業関連 公表案件(AD19aa)案件数ベース/不動産案件を除く
- 日本企業関連 完了案件(AF23aa)案件数ベース/不動産案件を除く
公表案件と完了案件の両方で首位に立つことは、単に案件を受注するだけでなく、確実にクローズまで導く遂行力の高さも意味します。ここがポイントです。
MACPとはどのような会社か——成り立ちと強みの核心
M&AキャピタルパートナーズはM&Aアドバイザリーに特化した専門会社として設立され、現在は東証プライム市場に上場しています(証券コード6080)。東京都中央区を本拠地に置き、代表取締役社長は中村悟氏です。
創業以来の主戦場は中堅・中小企業のM&A仲介でした。事業承継問題が深刻化する日本において、後継者不在の中小企業オーナーと買い手企業をつなぐ役割を着実に積み上げ、案件数という量の軸で国内最大級の実績を築いてきました。中小企業庁のデータが示すように、国内中小企業の経営者の高齢化は特定地域や業種にとどまらず製造業・小売業・サービス業に広く及んでおり、MACPの相談件数の裾野はそれに応じて拡張し続けています。
見落とされがちですが、MACPの成長モデルは「量から質へ」という一方向の転換ではありません。中小企業M&Aの量的優位を維持しながら、大企業・上場企業領域へと同時に拡張しているのが最大の特徴です。同社はIBカバレッジ部を新設し、大企業向けの投資銀行業務を本格強化。TOB(株式公開買付)案件への関与も実現し、支援するM&Aの規模の大型化が着実に進んでいます。
なぜ2026年上半期に3冠を達成できたのか
今回の3冠は偶然の産物ではありません。2026年第1四半期(1〜3月)のリーグテーブルでも首位を獲得しており、上半期通算での連続1位達成です。継続的な首位維持こそが、この結果の本質的な意味です。
背景には日本企業を取り巻く構造的な変化があります。地政学リスク、物価高騰、人手不足、金利上昇という四重の逆風の中で、企業は現状維持ではなく成長戦略としてのM&Aに積極的に動いています。金利上昇局面においては、有利子負債を抱えたまま多角化を維持するコストが上昇するため、非中核事業の売却と本業への集中というカーブアウト型の動きが加速します。一方、脱炭素や半導体サプライチェーン再編といった構造転換を迫られた製造業では、技術・人材の獲得を目的とした買収需要が拡大しています。2026年前半のM&A案件増加は、こうした複数の産業トレンドが重なった結果と見るべきでしょう。
MACPが中堅・中小企業の豊富なネットワークを持ちながら、IBカバレッジ部を通じて大企業案件にも対応できる「全規模対応体制」を整えた時期と、この市場拡大のタイミングが重なりました。単なる運ではなく、戦略的な先行投資の結実と見るべきでしょう。
「案件数ベース1位」は何を意味するのか——金額ベースとの違い
リーグテーブルには「案件数ベース」と「金額ベース」という2つの軸があります。大手証券会社や外資系投資銀行が強みを発揮するのは、大型案件の金額ベースのランキングです。一方、案件数ベースの首位は、件数の多い中堅・中小企業M&Aにおける圧倒的な処理能力を示しています。
あえて問い直すと、「案件数1位はすごいのか」という疑問も出てきます。単価の低い案件を多数こなすだけでは本物の実力とは言えない、という見方も業界内には存在します。しかしここで注目すべきは、MACPが同時にTOB案件など大型案件の実績も積み上げている点です。中小案件の量と大型案件の質を両立させているからこそ、3部門での首位という形で結果に表れています。
日本のM&A市場の特性を考えれば、中堅・中小企業の案件数が圧倒的多数を占めることは明白です。その市場で連続1位を維持することは、日本のM&Aエコシステム全体に対する貢献度の高さを示すものでもあります。
IBカバレッジ部新設が示す戦略転換の深度
IBカバレッジ部の設立は、MACPにとって創業以来最大の戦略転換と位置づけられます。投資銀行業務とは、M&Aアドバイザリーに加え、事業再編の設計、株式の非公開化(ゴーイング・プライベート)など、高度な財務・法務の専門知識を要する業務です。
従来のM&A仲介業務が「売りたいオーナーと買いたい企業をつなぐ」マッチング型であるとすれば、投資銀行業務は「企業価値をどう最大化するかの戦略立案から実行まで」を担うコンサルティング型です。この2つのモデルを一社で運営する体制は、業界内でも異色の存在感を持ちます。
TOB案件への関与はその象徴です。TOBは上場企業の株式を市場外で取得する手法であり、開示規制・タイムライン管理・株主説得など、中小企業M&Aとはまったく異なるノウハウが求められます。その領域に踏み込んだことは、MACPが公表する経営方針における高度な投資銀行業務への注力姿勢と一致しています。
事業承継M&Aの需要構造——なぜ案件数は増え続けるのか
日本における中堅・中小企業の後継者問題は、短期的に解消される課題ではありません。団塊世代の経営者が引退期を迎える中で、後継者不在の企業が廃業を選ぶ前にM&Aによる第三者承継を検討するケースは今後も続くと見られています。
加えて、金利上昇局面は企業の財務戦略にも影響を与えます。借入コストが上昇する環境では、非中核事業を売却して本業に経営資源を集中させるカーブアウト型のM&Aも増加します。売り手側の動機が多様化することで、案件の総量はむしろ底上げされる構造にあります。
MACPがこの市場で圧倒的な案件数を維持できている背景には、全国の経営者から寄せられる相談件数と、それを処理するアドバイザーの体制が競合他社を大きく上回っているという現実があります。
競合他社との差別化——何が「圧倒的1位」を可能にしているのか
リーグテーブルで「1位」と「2位」は大きく異なります。プレスリリースが「圧倒的1位」と表現するほどの格差がある点に注目が必要です。ただし、その具体的な件数差については同社の公式発表を参照することが正確な理解につながります。
国内M&A仲介市場では、日本M&Aセンターや同業の専門会社が競合として存在します。それでもMACPが案件数で突出できる要因として、同社が挙げるのは「専門性の高さ」と「規模を問わない対応力」の組み合わせです。中小企業専門と割り切らず、大企業まで射程に入れることで、紹介ネットワークが広がりやすい構造があります。
業界の常識として「中小企業M&Aの仲介と投資銀行業務は別物」という認識が長く続いてきました。しかしMACPの戦略はその常識を問い直すものです。両者を一体で提供できるプラットフォームが、案件数の拡大と案件規模の大型化を同時に実現させています。
投資家・経営者が今後注視すべきポイント
今回の3冠達成はMACPにとって重要なマイルストーンですが、投資家や経営者が注目すべきはその先の展開です。
まず、IBカバレッジ部の大型案件実績がどのように積み上がっていくかです。TOB案件への関与に続き、株式の非公開化や大企業同士の経営統合といった複雑な案件に継続的に関与できるかが、同社が掲げる高度な投資銀行業務への展開という目標の実現可能性を測る指標になります。
次に、案件数1位の維持と収益性のバランスです。件数を増やすためにアドバイザー人員を拡充すれば固定費が上昇します。成長の質を測るには、案件数の推移だけでなく1件あたりの収益貢献度にも目を向ける必要があります。
そして、日本企業のM&A活用が加速する環境下で、MACPがどの規模・業種のクライアントにどんな価値を提供できるかの具体的な事例が積み重なることが、ブランドの厚みを増すことになります。
まとめ——3冠が示す案件数ベースにおける国内M&A業界の「重心移動」
LSEGリーグテーブル2026年上半期での3冠達成は、MACPの実力を第三者が客観的に認証したものです。案件数という指標は、日本のM&A市場の厚みそのものを反映しており、その中で連続首位を維持することは容易ではありません。
中堅・中小企業M&Aを主軸としながら、IBカバレッジ部を通じて大企業・投資銀行領域へと展開するMACPの戦略は、案件数ベースのリーグテーブルにおいて、国内専門会社が外資系大手の存在感を超えつつある流れを象徴しています。なお、金額ベースのランキングでは引き続き大規模案件を強みとする外資系大手が上位を占める構図が続いており、「重心移動」はあくまで案件数という軸における変化として捉えることが正確です。
地政学リスクや金利上昇など構造的な逆風が続く中で、成長手段としてのM&Aへの需要は衰えません。その需要を最も多く・確実に捌き続ける会社がどこかを示すリーグテーブルで、MACPが今後も首位を維持できるかどうかは、日本企業全体のM&A活用の深化を測るバロメーターとしても注視する価値があります。
Q&A
MACPが1位を獲得したリーグテーブルの3部門は具体的に何ですか?
「国内案件 アドバイザー上位5位 案件数ベース(不動産案件を除く)」「日本企業関連 公表案件 案件数ベース(不動産案件を除く)」「日本企業関連 完了案件 案件数ベース(不動産案件を除く)」の3部門です。いずれもLSEG(ロンドン証券取引所グループ)が発表した2026年1〜6月期のデータに基づきます。
今回の3冠は初めての快挙ですか?
今回の上半期3冠に先立ち、2026年第1四半期(1〜3月)でも同様に首位を獲得しており、連続での1位達成となります。単発ではなく継続的な首位維持が今回の結果の特徴です。
案件数ベースのランキングと金額ベースのランキングはどう違うのですか?
金額ベースは大型案件を手掛ける外資系投資銀行や大手証券が強く、案件数ベースは件数の多い中堅・中小企業M&Aの処理能力を反映します。MACPが首位を獲得したのは案件数ベースの部門です。
IBカバレッジ部とはどのような部署ですか?
2024年10月に設立された部署で、中堅以上の規模の大企業を対象に投資銀行業務を担います。大企業のM&A、事業再編、株式の非公開化などの高度な案件支援が主な役割です。
MACPはどこに上場していますか?
東京証券取引所プライム市場に上場しており、証券コードは6080です。


