M&Aを通じて企業を売却する際、売り手の代表者が負っている個人保証を外すことは、売り手にとって非常に重要な課題です。特に中小企業においては、代表者が会社の借入金や取引先との契約に対して個人保証を求められることが一般的ですが、会社売却後にこの個人保証が残ってしまうと、売却後も代表者個人が債務に対して責任を負い続けるリスクがあります。
この記事では、M&Aの売り手として、代表者が個人保証をどのようにして外すことができるのか、その具体的な方法や交渉ポイントについて解説します。
1. 個人保証を外す重要性
M&Aで会社を売却した後も、代表者が個人保証を引き続き負うという状況は避けるべきです。個人保証が残ったままでは、たとえ会社を売却しても、万が一買い手側が債務を履行できなかった場合に、売り手側の代表者がその債務を肩代わりすることになります。このリスクを排除するためには、売却前に個人保証を外しておくことが必須です。
2. 個人保証を外すための方法
個人保証を外す方法には、いくつかの選択肢があります。以下にその具体的なステップを紹介します。
2-1. 買い手による代替保証の提供
一つの方法は、買い手側が代わりに保証を提供することです。M&Aの契約交渉において、売却後に売り手側の代表者の個人保証を買い手に引き継ぐ、あるいは買い手自身が金融機関や取引先と新たな保証契約を結ぶことを条件として交渉します。
この方法では、買い手が新たな保証人となるか、あるいは会社が十分な資産を持っている場合、保証を会社自体に付け替えることが可能です。
2-2. 金融機関との交渉
もう一つの方法は、金融機関との直接交渉です。企業売却の際に、金融機関に対して個人保証を解除するための交渉を行います。この場合、金融機関は買い手企業の財務状況や信用力を考慮した上で、新たな保証契約を結ぶことに同意する場合があります。
金融機関との交渉を成功させるためには、買い手企業が売却後も安定して債務を履行できる財務的な裏付けを示すことが重要です。
2-3. 債務の返済・再構築
売却前に債務の返済を行うことも、個人保証を外す一つの手段です。特に借入金が少額である場合や、売却代金を一部充てて債務を返済できる場合、売却前に借入を清算し、個人保証の解除を求めることが可能です。
また、債務が多い場合でも、再構築(リファイナンス)を行い、条件を見直すことで保証の解除を検討することができます。
2-4. 保証解除の特約を契約に盛り込む
M&A契約において、個人保証の解除を条件とする特約を明記することも重要です。売却後一定期間内に個人保証が解除されなかった場合、違約金の発生や契約の解除が可能となる条項を設定することで、売り手側に対するリスクを軽減できます。
3. 個人保証の解除に関する交渉ポイント
個人保証を外すための交渉は、M&Aにおける非常に重要な部分であり、専門家のサポートが必要になることが多いです。ここでは、交渉を有利に進めるためのポイントをいくつか紹介します。
3-1. 早めの準備が鍵
個人保証の解除に関する交渉は、できるだけ早い段階から始めることが肝要です。売却交渉の最初からこの点を買い手と共有し、金融機関との交渉も早めに開始することで、スムーズな保証解除を目指します。
3-2. 専門家との協力
個人保証の解除には、M&A専門のアドバイザーや弁護士、金融機関との交渉に精通した専門家の協力が欠かせません。彼らのサポートを得ることで、より有利な条件で交渉を進めることが可能です。
3-3. 売却後のリスク管理
仮に個人保証が完全に解除されない場合でも、売り手側としてはリスク管理の策を講じることが求められます。例えば、一定期間後に保証解除が達成されることを前提とした条件付き契約の締結や、保証リスクに対する保険商品を検討することも一つの方法です。
まとめ
M&Aにおける個人保証の解除は、売り手にとって非常に重要な要素です。この記事で紹介した方法を参考に、買い手との交渉や金融機関とのやり取りを通じて、できるだけ早期に個人保証を外すための準備を進めることが大切です。また、専門家のサポートを活用し、売却後のリスクを最小限に抑えるための対策を講じることも忘れないようにしましょう。
個人保証の解除について、さらに詳細なアドバイスやサポートが必要な場合は、専門的なM&Aアドバイザーに相談することをお勧めします。


