M&Aの売却プロセスにおいて、売り手企業も規制に対応する必要があります。規制を遵守しないと、取引の遅延や中断、罰則が科される可能性があります。売り手企業として、関連規制を十分に理解し、事前準備を整えることが、スムーズな取引成立の鍵です。本記事では、M&Aに関する主な規制と売り手企業が注意すべきポイントを解説します。
1. M&Aに関連する主な規制
(1) 独占禁止法
- 概要:買収による市場競争への影響を防ぐための規制です。売り手企業が一定の規模を持つ場合、買い手が公正取引委員会に事前届出を行う必要があります。
- 売り手としての注意点:
- 自社が市場シェアの高い事業を有している場合、競争制限の可能性を把握しておく。
- 買い手が独占禁止法に基づく審査に対応できる準備を支援する。
(2) 外為法(外国為替及び外国貿易法)
- 概要:外国企業や外国人投資家による買収に対し、日本の安全保障や重要インフラを守るための規制。
- 対象分野:
- 防衛、エネルギー、通信、IT、医療などの分野。
- 売り手としての注意点:
- 自社の事業が規制対象分野に該当する場合、事前に外国投資家との交渉スケジュールを調整。
- 買い手に外為法の手続きが必要な場合、その対応を確認する。
(3) 会社法
- 概要:売却手法(株式譲渡、事業譲渡、合併など)に応じた法的手続きが求められます。
- 売り手としての注意点:
- 株主総会での承認が必要な取引について、株主への説明責任を果たす。
- 株主から反対される場合のリスク(少数株主権行使)に備え、合意形成を進める。
(4) 金融商品取引法
- 概要:上場企業や公開会社の株式を対象とする取引では、透明性の確保が求められます。
- 売り手としての注意点:
- 自社が上場企業の場合、買収に関する情報の開示義務を遵守。
- インサイダー情報の管理を徹底し、法令違反を防ぐ。
(5) 労働法関連
- 概要:売却後の従業員の雇用条件や待遇の変更に関する規制。
- 売り手としての注意点:
- M&A後も従業員が安心して働けるよう、労働契約承継法に基づき対応。
- 従業員に対してM&Aの影響を説明し、不安を解消する。
(6) 知的財産法
- 概要:特許、商標、著作権、営業秘密などの知的財産が取引対象に含まれる場合、権利の確認が求められます。
- 売り手としての注意点:
- 自社が所有する知的財産の権利関係を整理。
- 買い手への移転に必要な手続きや契約条件を確認。
2. 売り手が注意すべきポイント
(1) 情報開示の透明性を確保
- M&Aプロセスでは、財務状況や契約情報などを開示する必要があります。
- 情報を過小または過大に提示しないよう、適切なデータを準備。
(2) デューデリジェンスへの対応
- 買い手が実施するデューデリジェンスに備えて、以下を整理:
- 財務データや契約内容
- 知的財産の権利状況
- 労働契約や法務リスク
(3) 株主や従業員との合意形成
- 株主や従業員の理解を得ることが、円滑な取引成立のカギ。
- 株主総会での承認手続きや従業員への説明を怠らない。
(4) コンプライアンス体制の確認
- 過去の法令違反や未解決のリスクがないかを事前にチェック。
- 規制対象分野に該当する場合、買い手への説明責任を果たす。
(5) 契約内容の詳細確認
- 売却契約に含まれる条件(表明保証、アーンアウト条項など)を慎重に検討。
- 自社が負う責任範囲やリスク分担を明確化。
3. 売却をスムーズに進めるための対応策
(1) 規制の早期確認
- 自社が規制対象となるかを確認し、必要な手続きに対応。
- 規制に関連するリスクがある場合、買い手と協議して解決策を検討。
(2) 専門家の活用
- 弁護士やM&Aアドバイザー、会計士のサポートを受ける。
- 規制への対応方法や契約条件の調整をプロに依頼。
(3) 事前準備を徹底
- 規制に基づく届出が必要な場合、スケジュールに余裕を持たせる。
- 財務資料や契約情報、知的財産リストなどを整備。
4. まとめ
M&Aの売却プロセスでは、買い手だけでなく売り手企業にも規制対応の責任があります。関連規制を正確に把握し、事前準備を整えることで、取引をスムーズに進められます。また、適切な専門家のサポートを受けながら、規制リスクを最小限に抑えることが成功への鍵です。
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