MBO(Management Buyout/マネジメント・バイアウト)とは、会社の経営陣(マネジメント)が自ら出資し、会社の株式や事業の全部または一部を買収する手法を指します。主に、経営陣が現在の事業の運営権を継続しながら、より主体的に事業の舵取りを行うことを目的としています。
MBOの特徴と目的
MBOは通常、次のような目的や状況で行われます。
- 経営陣による独立
- 大企業の子会社や事業部門が、親会社の意向に縛られることなく経営の自由度を高めるために行われる。
- 経営陣が事業を引き継ぐことで、経営の方向性を自ら決定できる。
- 事業承継の手段
- 後継者がいない場合や、現経営陣がそのまま次世代の経営を担う際に活用される。
- 特に中小企業で用いられることが多い。
- 企業価値の向上
- 経営陣が自社株を取得することで、経営者のインセンティブが高まり、企業価値を向上させる効果が期待される。
- 非公開化
- 上場企業の場合、経営陣が株式を買い取ることで株式市場から非公開化するケースがある。これにより、短期的な株主利益に左右されず、長期的な視点で経営を行うことが可能になる。
MBOのメリット
1. 経営陣による主体的な意思決定
経営陣が株主となるため、外部株主に左右されることなく意思決定が行えるようになります。
2. 事業承継の円滑化
経営陣がそのまま引き継ぐため、従業員や取引先にとっても安心感があり、事業運営の継続性が保たれます。
3. 株式の非公開化による柔軟な経営
上場企業の場合、MBOを通じて非公開化を行えば、市場の短期的な利益追求プレッシャーから解放され、長期的な事業戦略を実行しやすくなります。
MBOのデメリット・リスク
1. 資金調達の課題
経営陣が株式を買い取るため、多額の資金が必要です。そのため、金融機関や投資ファンドからの借り入れ(レバレッジド・バイアウト=LBO)に依存することが多く、財務リスクが高まる可能性があります。
2. 利益相反の可能性
MBOでは、経営陣が買い手となるため、現株主(特に少数株主)との間で利益相反が生じる可能性があります。例えば、買収価格が適正であるかが問題となるケースもあります。
3. 従業員や取引先への影響
MBOがうまくいかなかった場合、資金負担や経営の失敗が従業員や取引先に影響を及ぼす可能性があります。
MBOの具体例
1. 大企業の事業部門の独立
大企業が収益性の低い事業部門を切り離す際、当該事業部門の経営陣がMBOを行い独立するケースがあります。これにより、親会社は収益性を向上させ、経営陣は独自に事業を成長させることができます。
2. 中小企業での事業承継
後継者不足に悩む中小企業が、現経営陣が主導するMBOを通じて事業承継を行う例も増えています。この場合、経営の引き継ぎがスムーズに進むだけでなく、従業員の雇用や取引関係も維持されやすいのが特徴です。
MBOにおける注意点
- 適正な買収価格の設定
- 現株主が納得できる買収価格を設定することが重要です。不適切な価格設定は紛争を引き起こす可能性があります。
- 資金調達計画の慎重な策定
- 借入金の多いMBOは、財務負担が大きくなります。無理のない返済計画を立てることが求められます。
- 専門家の活用
- M&Aアドバイザーや弁護士、会計士などの専門家を活用して、スムーズかつ公正なプロセスを進めることが重要です。
まとめ|MBOは経営陣主導の成長戦略
MBOは、経営陣が事業運営における主導権を握ることで、企業価値の向上や事業承継の円滑化を目指す強力な手段です。ただし、資金調達や利益相反といったリスクも伴うため、慎重な計画と専門家の支援が欠かせません。
もしMBOを検討している場合は、信頼できるM&Aアドバイザーに相談し、事業に最適なプランを構築することをお勧めします。


