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スチュワードシップ・コードとは?基本から今後の展開まで解説

用語集

以下では、スチュワードシップ・コード(Stewardship Code)について、概要や歴史的背景、具体的な原則や取り組み事例、導入によるメリット・課題などを総合的に解説します。特に日本で施行された「日本版スチュワードシップ・コード」を中心に、投資家・企業双方に求められるアクションやガバナンス改革との関連性にも触れます。企業ガバナンスや投資の在り方を理解したい方や、金融・証券市場での取引に携わる方にとって有益な情報となるはずです。


スチュワードシップ・コードとは何か?

スチュワードシップ・コード(Stewardship Code) とは、機関投資家(アセットマネージャーや年金基金、保険会社など)が、投資先企業の中長期的な企業価値向上や持続的成長を促すために果たすべき役割や責任を明文化した原則のことです。
「スチュワードシップ(Stewardship)」とは、資産の受託者としての責務を果たすことを意味し、投資家が顧客や受益者(たとえば年金加入者)の利益を最大化するために、投資先企業との建設的な対話(エンゲージメント)や議決権行使を適切に行うことが求められます。

スチュワードシップ・コードは、2000年代にイギリス(UK)で誕生し、世界各国に波及しました。その根幹には、機関投資家が「消極的に株式を保有するだけ」ではなく、企業行動に責任あるかたちで関与することによって、市場全体の効率性と企業価値の向上を図ろうとする考え方があります。


スチュワードシップ・コードが注目される背景

コーポレートガバナンス改革との連動

日本では2014年以降、「日本再興戦略」の一環としてコーポレートガバナンス改革が大きく進みました。企業側にはコーポレートガバナンス・コードが導入され、取締役会の独立性や株主への説明責任を強化する施策が取られています。しかし、企業だけがガバナンス改革に取り組むだけでは不十分であり、投資家側も適切なモニタリングと対話を行う必要があります。

ここで、企業ガバナンス(企業側)とスチュワードシップ(投資家側)は車の両輪のような関係になります。企業と投資家がそれぞれの役割を果たすことで、株主価値やステークホルダー全体の利益が高まると期待されるのです。

投資家と企業の対話の重要性

従来の株式市場では、投資家と企業の関係は必ずしも積極的な対話を伴うものではありませんでした。しかし、グローバル化やアクティビスト投資家の台頭を背景に、投資家の株主価値向上要求経営への建設的な関与が急速に進んでいます。スチュワードシップ・コードは、このような時代の変化に対応し、双方が中長期的視点で価値創造を目指すためのガイドラインとして機能するのです。


日本版スチュワードシップ・コードの概要

制定の経緯

日本では2014年2月に「日本版スチュワードシップ・コード」が公表されました。金融庁が主導し、機関投資家や企業関係者、学識経験者などの協議を経て策定されました。その後、2017年や2020年、2022年にも改訂が行われ、エンゲージメントやESG要素への配慮が一層強調されるようになっています。

基本原則のポイント

日本版スチュワードシップ・コードには、主に以下のような原則が掲げられています(一部抜粋)。

  1. 受託者責任
    機関投資家は受益者の利益を最優先し、利益相反の管理や高い専門性を発揮すべきである。
  2. 投資先企業のモニタリング
    投資家は投資先企業の戦略や業績、リスクなどを十分に理解し、継続的にモニタリングする。
  3. エンゲージメントの強化
    投資先企業との建設的な対話を通じて、中長期的な価値向上や経営改善を促す。
  4. 議決権行使とその開示
    議決権を適切に行使し、その基準や結果について情報開示を行うこと。
  5. 透明性と説明責任
    スチュワードシップ活動の方針や手法、成果などを受益者・顧客に対して明確に説明する。

これらの原則は「コンプライ・オア・エクスプレイン(順守か説明か)」という運用が取られており、機関投資家は原則に従わない場合、その理由を説明する必要があります。


スチュワードシップ活動の実務

モニタリングとエンゲージメント

スチュワードシップ・コードでは、機関投資家が投資先企業を定期的かつ継続的にモニタリングすることを求めています。具体的には、決算資料やIR情報だけでなく、経営戦略やESG課題への取り組み状況などを把握することが重要です。
そのうえで、経営上の懸念事項や改善ポイントがある場合、**対話(エンゲージメント)**を通じて経営陣に働きかけ、中長期的な企業価値向上へとつなげます。

議決権行使とその開示

議決権行使は、機関投資家が株主として意思表示を行う重要な手段です。スチュワードシップ・コードでは、この行使基準や実際の行使状況を可能な限り透明性高く開示することが推奨されています。
近年では、主要な機関投資家が個別の議案ごとの賛否を公開したり、賛否理由を詳細に説明したりする動きが広がってきました。これにより、投資先企業や他の株主、社会全体が機関投資家の判断基準や視点を理解しやすくなります。

利益相反管理と透明性確保

金融グループに属する投資家や、複数の事業部門を擁する機関投資家の場合、利益相反が生じるリスクがあります。たとえば、銀行系の投資家が融資先企業に対して厳格な議決権行使を行いづらいといったケースです。
スチュワードシップ・コードは、こうした潜在的な利益相反を明確に認識し、事前に防止策を講じるとともに、顧客・受益者への適切な説明を求めています。


スチュワードシップ・コード導入によるメリット

中長期的な企業価値向上

スチュワードシップ活動が促進されることで、短期的な株価変動やM&Aの機会だけに注目するのではなく、企業の本質的な成長や経営課題の解決が重視されるようになります。
投資家と企業の関係が「対立」ではなく「協働」に近い形になり、経営改善やイノベーションが進みやすい環境が整うのです。その結果、中長期的視点での株主価値最大化が実現しやすくなります。

投資家と企業の信頼関係構築

スチュワードシップ・コードを遵守する機関投資家は、企業との対話を重視し、情報交換や建設的な提案を行う姿勢を示します。これによって、企業は市場からの信頼を高め、将来的な資金調達やブランド向上に繋げることができます。

グローバル資本市場への対応

国際的な投資家は、ESG(環境・社会・ガバナンス)やステークホルダー資本主義への関心が高まっています。日本のスチュワードシップ・コードへの取り組みは、グローバル基準との整合性をアピールする上で重要な意味を持ち、海外投資家からの評価向上や投資誘致に寄与します。


取り組み事例:投資家と企業の対話

アクティビスト投資家との連携

近年、日本市場でもアクティビスト投資家(物言う株主)が存在感を増しています。スチュワードシップ・コードを背景に、従来の対立的なイメージとは異なり、建設的な提案や経営陣との協議を重ね、企業価値向上を目指す事例が増えています。
このように、アクティビスト投資家の活動もスチュワードシップの枠組みに取り込まれることで、ガバナンス改革や株主還元の推進が加速する場面が見られます。

中長期視点の事業ポートフォリオ改善

機関投資家が具体的に企業へ対話を行う中で、事業ポートフォリオの見直し経営資源の最適配分を促すケースがあります。たとえば、長期的に収益性の低い事業を縮小し、新規成長分野へ投資を行うような意思決定をサポートし、株主価値の向上に貢献することが可能となります。


課題と批判:スチュワードシップ・コードの限界

徹底度のばらつき

スチュワードシップ・コードへの署名(受け入れ)を表明する機関投資家は増えていますが、その実践の度合いには大きなばらつきがあります。単に形式的にコードにサインしただけで、十分なエンゲージメントや議決権行使の開示を行わない投資家も存在するのが現実です。

議決権行使基準の不透明性

議決権行使結果の開示が進んだとはいえ、具体的な判断基準やスタンスが明確でないケースも多く、投資先企業や他の市場参加者にとっては、投資家の意図が読みづらいという課題があります。
また、海外投資家が大量保有報告をしないまま企業に圧力をかける事例もあり、議決権行使プロセスの透明性に対する懸念が残っています。

ESG投資との連携不足

スチュワードシップ・コードは、近年注目されるESG(環境・社会・ガバナンス)投資と密接に関連しますが、必ずしも十分な連携が取れているとは限りません。たとえば、気候変動リスクや人権問題といったテーマに対して、どの程度まで投資家が踏み込んで対話を行うべきかなど、共通の枠組みがまだ整備途上の段階です。


今後の展望:進化するスチュワードシップ・コード

気候変動やESG課題への対応強化

世界的に脱炭素やSDGsなどの社会課題がクローズアップされる中、機関投資家の役割は従来の「株主価値向上」だけでなく、サステナビリティ社会的インパクトをも含むものへと拡張しています。日本のスチュワードシップ・コードにおいても、今後はESG要素をより強く組み込む方向へ進化していくと予測されます。

個人投資家や国際機関との連携拡大

スチュワードシップ・コードは機関投資家が対象ですが、個人投資家との対話や情報共有も無視できません。投資信託やETFなどを介して、実質的に多くの個人が市場に参加しているからです。今後は、個人投資家向けの開示や説明をさらに充実させることが期待されます。
また、国際機関(OECDや国連PRIなど)との協力を通じて、グローバルスタンダードとの調和を図る動きも進むでしょう。


まとめ:スチュワードシップ・コードが目指す未来

スチュワードシップ・コードは、機関投資家が受益者の利益を守りながら、投資先企業の中長期的な成長を後押しするための指針として、今後ますます重要性を増していくと考えられます。日本においては、コーポレートガバナンス・コードとの相乗効果を通じて、企業と投資家の関係性に大きな変化をもたらしています。

  • 投資家側は、従来の「持ち合い株主」文化から脱却し、エンゲージメントと議決権行使を通じて経営改善に寄与する姿勢が求められる。
  • 企業側は、投資家からの要望を単なる短期的な圧力として捉えるのではなく、自社の競争力強化やガバナンス向上に活用することで、国際市場での信頼性を高められる。
  • 市場全体では、透明性の高いエンゲージメントが促進されることで、投資家・企業・社会・環境が互いに価値を高め合うエコシステムが形成されていく。

スチュワードシップ・コードの取り組みは、まだ発展途上の部分が多く、議決権行使基準の統一やESG課題への対応など、課題は山積しています。しかし、投資家と企業の「協働」と「対話」が実質的に機能し始めた点は、大きな進歩といえるでしょう。

今後は、国際的なガイドラインや他国の成功例・失敗例を参考にしつつ、日本版スチュワードシップ・コードがさらに改訂・進化を遂げる可能性があります。これにより、投資家と企業の双方がメリットを享受できる形での資本市場が成長し、ひいては日本経済全体の活性化につながっていくことが期待されます。

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この記事を書いた人
MANDA編集部 森田

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