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M&AにおけるIRL(Information Request List)の完全ガイド【2025年最新版】

用語集

本記事では、M&A デューデリジェンスの要である IRL(Information Request List/資料依頼リスト) の基礎知識から実務への落とし込み方、最新トレンド、失敗しないコツまでを余すところなく解説します。

IRLとは何か

IRL(Information Request List) とは、買い手が売り手に提示する「提出してほしい資料のリスト」です。欧米の M&A ではデューデリジェンス(DD)の第一歩として定着しており、資料の種類・フォーマット・提出期限を体系的に指定 することで、短期間で網羅的なリスク把握を実現します。

  • 別称:Request List/資料依頼書/RFI(Request for Information)
  • 範囲:財務・税務・法務・人事・IT・ESG などマルチディシプリン
  • 提出方法:近年はクラウド VDR(Virtual Data Room)が主流

📝 ポイント:IM(Information Memorandum)は売り手が作成する概要書ですが、IRLは買い手側が主体となって作成します。この主体の違いが両者の最大の相違点です。


IRLが重要視される3つの理由

  1. DD期間短縮によるコスト削減
    Smartsheet 等のプロジェクト管理ツールと連携した IRL では、提出遅延が 35% 以上改善し、外部アドバイザー費用を平均 12% 削減したとの調査結果もあります(BCG 2024 年レポートより)。
  2. リスク可視化と交渉力強化
    網羅的な IRL は簿外債務の“見落とし”を防ぎ、契約交渉における価格調整条項・表明保証条項の根拠資料となります。
  3. PMI(統合)フェーズへのスムーズな移行
    IRL で収集したデータは PMI の Day 1 計画策定にそのまま転用でき、シナジー効果創出までのリードタイムを最短化します。

IRL作成6ステップ

ステップ1:ディールスコープと専門家チームの確定

  • 目的:100% 買収/JV/カーブアウト など
  • 範囲:子会社・海外拠点・IP ホールディング法人 など
  • 専門家:財務・税務・法務・IT・ESG・人事 ほか

ステップ2:初期 IRL ドラフトの作成

  • 過去案件の VDR 構成や公開テンプレートを参照し、200〜300 項目 を洗い出す
  • 米国法務フォーマット(ABA Model Form)をベースにすると抜け漏れが少ない

ステップ3:優先度と提出期限の設定

  • 各項目を 高・中・低 で色分け
  • ガントチャート で“誰が・いつまでに・何を”提出するか明確化

ステップ4:バーチャルデータルーム(VDR)の構築

  • Intralinks/Datasite/Box などを利用
  • フォルダ名を 「01_財務_1.1_PL」 のように IRL 番号と紐付ける

ステップ5:Q&A トラッキング

  • VDR の Q&A 機能 or MS Teams + Power Automate
  • 質問→回答→エビデンス再提出までを一気通貫でログ化

ステップ6:最終レビューとアーカイブ

  • 提出物を 「済」「要フォロー」「不適切」 の 3 区分でステータス管理
  • 案件クローズ後は IRL と資料一式を暗号化して 最低 5 年 保管(J-SOX 準拠)

主要領域別チェックリスト

財務 IRL

#資料名目的
1過去5年の財務諸表(PL・BS・CF)売上・利益・キャッシュフローの長期推移を把握
2期中試算表および月次推移表季節変動や月次トレンドの確認
3セグメント別売上高・粗利表収益力の源泉と集中度を可視化
4主要顧客上位20社の売上高推移顧客集中リスクの測定
5主要仕入先上位20社の購買額推移サプライヤー集中リスクの測定
6有利子負債明細(契約書、金利、償還スケジュール)資金調達条件と再調達リスクを把握
7固定資産台帳および減価償却ポリシー資産適正価値と費用配分方針の確認
8棚卸資産リスト(SKU別、ロット別)在庫回転率と滞留在庫リスクの特定
9税務申告書(法人税、消費税等)税務ポジションと潜在税負債の確認
10未払残業代・訴訟関連引当金の内訳潜在債務およびコンティンジェンシーの把握
11取引銀行とのコミットメントライン契約書短期資金調達余力の確認
12キャッシュマネジメントシステムの概要図資金効率と資金集中体制の評価
13連結パッケージと内部取引消去明細グループ間取引の影響を把握
14四半期ごとのForecastとVariance分析予算管理能力と見通し精度の確認
15為替・金利ヘッジ方針およびデリバティブ契約書市場リスク管理方針の検証
16株主総会議事録および配当政策資料企業の利益配分スタンスの把握
17投資有価証券リストと減損検討経緯投資資産の評価と損失リスクの測定
18役員報酬・ストックオプション明細インセンティブ構造とガバナンス評価
19年金債務および退職給付引当の計算根拠オフバランス負債の把握
20監査法人・会計士とのコミュニケーションレター過去の監査指摘事項と是正状況の確認

法務 IRL

  • 主要取引契約(販売代理店契約、サプライ契約 など)
  • 現在係争中の訴訟一覧 & 過去 5 年の訴訟履歴
  • 知財(特許・商標・著作権)の登録簿 & ライセンス契約

税務 IRL

  • 移転価格文書化 & APA(事前確認制度)
  • 繰延税金資産・負債の回収可能性テスト
  • 消費税簡易課税制度の適用状況

人事 IRL

  • 従業員名簿(職種・等級・勤務地・在宅勤務率)
  • 労働時間台帳 & 36 協定
  • ハラスメント研修履歴 & 内部通報件数

IT・サイバーセキュリティ IRL

  • システム構成図(オンプレ/クラウド)
  • セキュリティインシデント報告書(過去 3 年)
  • SOC2/ISO27001 監査報告書

ガバナンス体制とプロジェクト管理

三層モデル

  1. リクエスター(第一線):専門家チームが IRL 項目を起票
  2. コーディネーター(中間管理):PMO が提出状況をトラッキング
  3. スポンサー(経営層):CFO/CLO が重要資料の提出遅延をエスカレーション

🚀 ベストプラクティス:週 1 回のスプリントレビューを設定し、未提出資料の クリティカルパス を可視化。Jira や Notion でカンバン化するとチーム全体の進捗認識が揃います。


ツール選定と自動化の最前線

カテゴリ主なツール特徴
VDRIntralinks, Datasite, Ansarada金融機関レベルの暗号化、Q&A 機能
プロジェクト管理Asana, Smartsheet, Jiraガント・カンバン両対応、IRL 番号との連携可
RPA & AI OCRUiPath, ABBYY, Azure Form RecognizerPDF→Excel の自動変換/機密情報の自動マスキング
バージョン管理Git LFS, SharePoint契約書の版管理、コンフリクト防止

よくある失敗例と回避策

失敗例原因回避策
提出遅延が慢性化誰が担当か不明コーディネーターを 1 名指名し週次でフォロー
データ形式がバラバラフォーマット指定不足IRL に “PDF/Excel/CSV” 等明記
重要資料が欠落優先度設定なし 優先度を赤字でハイライト

成功事例:国内・クロスボーダーの2ケース

ケース1:国内 IT ベンダー買収(50 億円規模)

  • 課題:買い手は PE ファンドで 45 日 DD のタイトスケジュール
  • 施策:IRL を 250 項目に分解し、Asana 連携で自動リマインド
  • 成果:提出遅延ゼロ、外部アドバイザー費用 15% 削減、買収後 6 ヵ月で EBITDA 20% 増

ケース2:日米クロスボーダー(製造業、200 億円規模)

  • 課題:複数タイムゾーンで資料授受が分散
  • 施策:Datasite の自動翻訳 + ChatGPT 要約でレビュー時間 30% 短縮
  • 成果:DD 完了まで 60 日→42 日へ短縮、Currency リスク契約条項を早期合意

今後のトレンド:AIとESGの台頭

  1. 生成 AI による自動 IRL ドラフト:過去案件のメタデータを学習し、ボタン一つでドラフト生成
  2. ESG DD の標準化:CO₂ 排出データや DE&I 指標が IRL に組み込まれる
  3. リアルタイム KPI 連携:IoT センサーから在庫・稼働率を VDR に自動連携

FAQ

Q1:IRL 項目数は多いほど良い?
A: 網羅性は重要ですが、”Must Have” と “Nice to Have” を分け、100〜300 項目 が目安です。

Q2:秘密保持契約(NDA)が未締結でも IRL を送って良い?
A: NDA 締結前は送付 NG。まずは DD フェーズの NDA を締結しましょう。

Q3:IRL と VDR のフォルダ構成は同じにすべき?
A: 番号連動させると検索性が向上します。推奨。


まとめ

IRL は 「DD を制する者は M&A を制す」 を体現するツールです。以下 3 点を押さえれば、どんなディールでも大きな失敗を避けられます。

  1. 網羅性と優先度のバランス を保つ
  2. ツールとガバナンス体制 を整え“人依存”を排除
  3. AI と ESG という新潮流を取り込み、競争優位を最大化
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この記事を書いた人
MANDA編集部 森田

なにかと課題の多いM&A業界を民主化し、日本の未来を大きく左右する「事業承継問題」を解決することが、私たちのミッションです。M&Aをこれから始める方から、M&Aのプロフェッショナルの方まで、M&A周りを判りやすく丁寧に解説します。

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