M&A BASE株式会社(代表取締役:小島直広)は、2026年8月1日、三菱商事出身でIESE Business School MBA取得者の岡部朋也氏が代表を務めるトラディショナル型サーチファンド「たすき合同会社」への出資を実行しました。自社運営の「M&A BASEサーチファンド1号投資事業有限責任組合」を通じた出資で、ソーシング支援からPMI(経営統合・価値向上)支援まで一貫して伴走します。日本のM&A市場において、サーチファンドという手法がいよいよ本格的な拡大局面に入ったことを示す案件です。
M&A BASEとはどのような会社か
M&A BASEは、東証スタンダード上場のエキサイトホールディングス株式会社のグループ会社として、サーチファンド事業を専門に展開しています。本社は東京都港区。「サーチャーとITの力で成長が期待できる企業への投資」を投資コンセプトに掲げ、時価総額1〜10億円規模の中小企業を対象としています。
注目すべきは、同社が単なるマッチング仲介にとどまらず、GP(無限責任組合員)として自らファンドを運営している点です。ファンドを通じてサーチャーへの出資・ソーシング支援・PMI支援・EXIT支援まで一気通貫で担うため、承継後の経営変革にも深く関与できる体制を整えています。
これまでの承継事例として、2024年11月にオムライス専門店「神田たまごけん」「肉とたまご」を展開する株式会社TGKの承継、2025年4月には汚水・汚泥処理剤メーカーである株式会社アクト(徳島県)の承継を実現しています。業種・地域を問わずサーチャーの専門性に応じた案件発掘ができることが、同社の大きな強みです。
サーチファンドとは何か——その仕組みと日本での文脈
サーチファンドは、1984年に米国のビジネススクールで生まれたプライベートエクイティ投資の一形態です。経営者を志す優秀な人材(サーチャー)が投資家の支援を受けて中小企業を発掘・承継し、自ら経営者として企業価値向上に取り組む仕組みを指します。
見落とされがちですが、サーチファンドには大きく2つの型があります。投資家複数名からサーチ資金を調達して探索を開始するトラディショナル型と、承継先を先に特定してから資金調達する加速型(アクセラレーテッド型)です。今回の岡部氏のケースはトラディショナル型。つまり今まさに承継先を探索している段階であり、M&A BASEはそのサーチ活動そのものに出資し伴走する立場です。
日本において後継者不在に悩む中小企業が多数存在することは広く知られています。こうした状況の中で、サーチファンドは経営者候補と事業承継ニーズをつなぐ新たな選択肢として急速に注目を集めています。従来の大手M&A仲介や投資ファンドとは異なり、「サーチャーの顔が見える承継」という人間的な信頼関係がベースになるため、これまで投資・承継の対象になりにくかった中小企業も発掘できる点が特徴的です。
岡部朋也氏のプロフィールが意味するもの
京都大学農学部を卒業後、三菱商事で化学品の輸出入・三国間取引に従事した岡部朋也氏。国内出向先では半導体材料輸出部隊のマネージャーとして多国籍チームを率い、貿易プラットフォームの導入や全社デジタル戦略の策定・実装も主導しました。その後、スタンフォードと並ぶ「世界2大サーチファンドスクール」の一つとされるIESE Business School(スペイン)でMBAを取得し、日本サーチファンド協会にも所属しています。
ここがポイントです。岡部氏のバックグラウンドには、サーチャーとして必要な要素が複数重なっています。商社での国際取引経験は海外販路開拓に直結し、半導体・化学品の知識は製造業の技術的評価に活かせます。さらにデジタル戦略の実装経験は、承継後のDX推進という価値創造ストーリーにそのままつながります。
M&A BASE サーチファンド事業責任者の岡野健三氏が「商社・半導体・海外展開にまたがる実践的な知見は、日本のものづくり中小企業の成長余地を引き出す上で大きな武器」と評するのは、単なる社交辞令ではありません。実際に承継事例2のアクト社では、サーチャーの伊勢裕樹氏が語学力を活かしてアジア市場の販路開拓を実現しており、サーチャーの専門性が直接的な企業価値向上につながるモデルの有効性が実証されています。
岡部氏が描く承継先の探索方針
岡部氏が現時点で設定している承継先候補の探索方針は以下の通りです。
- 業種:半導体・プラスチック等の製造業、商社機能を有する企業などを中心に幅広く検討
- 業界特性:参入障壁が高く、安定したキャッシュフローが見込める業界
- 規模:EBITDA 1〜10億円程度
- 地域:日本全国
EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)1〜10億円という規模感は、大手M&Aファンドや上場企業が積極的にアプローチしにくい領域です。いわゆる「中小企業M&Aのボリュームゾーン」に狙いを定めているわけです。参入障壁の高さとキャッシュフローの安定性を重視する姿勢は、サーチファンド特有の長期保有・経営関与型の投資スタイルと整合しています。
なお岡部氏自身は「あくまで現時点での想定であり、個別案件の状況に応じて柔軟に検討する」と述べており、硬直的な基準ではなく、オーナー経営者との対話を通じて最適な承継先を見極めていく姿勢を示しています。
なぜ今、トラディショナル型サーチファンドなのか
日本のM&A市場では、大手M&A仲介会社による成約件数の増加が続いています。一方で、数億円規模の「小型案件」や「地方の技術系中小企業」は依然として承継先が見つかりにくい状況が続いています。大手ファンドにとってはロットが小さく、一般的な事業承継支援では経営への関与が薄くなりがちだからです。
サーチファンドはこの隙間を埋める構造を持っています。サーチャーが当事者として経営に入るため、売り手経営者にとっては「事業と従業員を任せられる人物」を直接見極められます。買い手側のサーチャーにとっては、ゼロイチの起業リスクを負わずに経営者になれるキャリアパスです。投資家にとっては、経営者候補の人的資本に投資するという新しいアセットクラスになります。
業界の常識をあえて疑うとすれば、「M&Aは売り手・買い手・仲介者のトライアングルで完結する」という前提です。サーチファンドは投資家・サーチャー・売り手オーナー・支援機関(M&A BASE)という四者構造で成立します。この複雑さがむしろ、長期的な関係構築と企業価値向上を担保するメカニズムになっています。
M&A BASEのサーチファンド事業が示す伴走モデルの実力
今回の出資でM&A BASEが提供する支援は、サーチ資金の提供にとどまりません。M&A仲介会社・金融機関・会計事務所・経営者ネットワーク・地方メディアなど多様なチャネルを通じたソーシング支援、デューデリジェンス支援、承継後のPMI・経営支援、そしてEXIT支援まで一連のプロセスをカバーします。
承継事例2のアクト社(徳島県)は、この伴走モデルの具体的な成果を示しています。承継前には手が届かなかったホームページ・ECの刷新によるWEB集客強化、バックオフィスのクラウド化を実行し、さらにアジア市場への販路開拓まで実現しました。地方の製造業が抱える「良い技術はあるが、デジタルと海外展開が弱い」という課題に対して、サーチャーの専門性とM&A BASEの支援体制が機能したケースです。
岡部氏の「商社×半導体×デジタル戦略」というバックグラウンドは、アクト社の事例と非常に近い文脈を持ちます。製造業や商社機能を持つ中小企業が、岡部氏を経営者として迎えることで何が変わるか——その答えは既に先行事例が示しています。
承継候補企業の紹介を求めるネットワーク戦略
今回のプレスリリースには、承継先候補企業の紹介を「M&A仲介会社をはじめ、金融機関・士業の皆様」に広く求めるという内容が含まれています。これはサーチファンドのソーシングが、いかに広範な人的ネットワークに依存しているかを示しています。
トラディショナル型サーチファンドにおいて、サーチ期間中にどれだけ質の高い案件情報を集められるかが承継の成否を大きく左右します。M&A BASEが持つ既存のネットワーク——仲介会社・金融機関・士業・地方メディア——をフル活用することで、岡部氏は個人サーチャーとしての情報収集力の限界を補完できます。これがM&A BASEへの出資を選択した実質的な意義の一つです。
承継候補案件の問い合わせ・紹介先として、岡部氏の「たすき合同会社」(https://tasuki-gk.co.jp/)が窓口となっています。
サーチャー候補の募集が示すM&A BASEの成長戦略
M&A BASEは今回の出資と並行して、新たなサーチャー候補の募集も積極的に行っています。「0→1の起業ではなく、1→10の経営を得意としている方」「中小企業の経営を通じて日本経済と地域活性化に貢献したい方」といった人物像を明示しています。
注目すべきは、既に起業している方も対象に含めている点です。「スピード感を持って会社を成長させたい」という既存起業家にとって、サーチファンドを通じた事業承継は選択肢の一つになり得ます。
M&A BASEがサーチャーのパイプラインを広げることは、そのままファンド事業の規模拡大につながります。TGK、アクト、そして今回の岡部氏と積み重なる承継事例は、ファンドの実績として次のサーチャー候補を引き付ける好循環を生み出しています。
日本のM&A市場における事業承継型投資の可能性
日本の中小企業M&A市場において、サーチファンドはまだ黎明期にあります。しかし米国では1984年の誕生以来、数十年かけて確立された投資モデルです。IESE Business Schoolのような世界トップクラスのビジネススクールがサーチファンド教育を体系化しており、そこで学んだ人材が日本市場に入ってきている現状は、日本のサーチファンド普及を加速させる大きな触媒になります。
M&A BASEの代表取締役・小島直広氏は「日本のサーチファンド業界の発展と、中小企業の事業承継という社会課題の解決に貢献する」と明言しています。これは単なる事業拡大の話ではなく、後継者不在の優良中小企業が廃業という選択肢を選ばずに済むためのエコシステム構築という社会的文脈を持っています。
岡部朋也氏が承継し成長させる企業が、いずれ日本のサーチファンド成功事例として語られる日が来るか。その答えを出すのはこれからですが、「商社×IESE MBA×製造業・半導体」というバックグラウンドと、M&A BASEの伴走体制の組み合わせは、期待感を持って注目できるチームです。
まとめ——この案件が示す3つの意義
今回のM&A BASEによる「たすき合同会社」への出資を整理すると、3つの意義が浮かび上がります。
- キャリアの多様化:起業でも転職でもない「事業承継で経営者になる」という選択肢を、世界水準のMBA人材が日本で実践している
- 中小企業の出口戦略の拡充:後継者不在の優良中小企業にとって、顔の見えるサーチャーへの承継という新たな選択肢が加わる
- サーチファンドエコシステムの深化:M&A BASEがGPとして自らファンドを運営しながら、トラディショナル型サーチファンドにも直接出資することで、多層的な支援体制を確立しつつある
日本全国の中小企業M&A案件の動向を横断的に把握したい方には、M&AデータプラットフォームMANDAで国内の承継・買収案件情報を確認することもできます。岡部氏の承継先探索は今まさに始まったばかりです。半導体・プラスチック等の製造業や商社機能を持つ企業の経営者で、後継者問題を抱えている方には、「たすき合同会社」への相談を検討する価値があります。
Q&A
M&A BASEが今回出資した「たすき合同会社」とはどのような組織ですか?
たすき合同会社は、三菱商事出身でIESE Business School MBAを取得した岡部朋也氏が代表を務めるトラディショナル型サーチファンドです。本社は東京都中央区に置かれ、M&A BASEからの出資を受けて承継先企業のサーチ活動を行っています。
今回の出資スキームはどのような仕組みになっていますか?
M&A BASEが自社GP(無限責任組合員)として運営する「M&A BASEサーチファンド1号投資事業有限責任組合」を通じて、岡部氏が組成したサーチファンドのサーチ資金へ直接出資する形です。M&A BASEはソーシング支援とPMI支援も担います。
岡部氏が探している承継先企業の条件は何ですか?
半導体・プラスチック等の製造業や商社機能を有する企業を中心に、参入障壁が高く安定したキャッシュフローが見込める業界を対象にしています。規模はEBITDA 1〜10億円程度、地域は日本全国が対象で、条件は個別案件に応じて柔軟に検討されます。
サーチファンドのトラディショナル型とは何が特徴ですか?
トラディショナル型サーチファンドは、まずサーチャーが投資家から資金を調達し、その後に承継先企業を探索・発掘するモデルです。承継先を先に特定してから資金調達する加速型とは異なり、サーチ活動そのものへの資金提供と支援が必要になります。
M&A BASEはこれまでにどのような事業承継を実現していますか?
2024年11月にオムライス専門店「神田たまごけん」「肉とたまご」を展開する株式会社TGKの承継、2025年4月に汚水・汚泥処理剤メーカーの株式会社アクト(徳島県)の承継を実現しています。いずれもサーチャーが代表取締役に就任し、デジタル活用や海外展開などの経営変革を実践しています。


