有限会社(ゆうげんがいしゃ)は、かつて「小規模事業者向けの簡易株式会社」として機能した会社形態です。2006 年5月1日の会社法施行に伴い有限会社法は廃止され、新規設立はできなくなりましたが、施行前に存在した会社は「特例有限会社」として存続しています。
重要ポイント
- 2025 年現在、商号に「有限会社」を残す企業は約18万社(法務省登記統計)
- 法律上は株式会社の特例形態として扱われるため、株式の発行・譲渡(M&A)も可能
- 新規設立は不可。将来も復活の予定なし
制度誕生から廃止までの歴史
創設背景(1940 年代)
第二次大戦後の資本不足と中小企業振興を目的に、最低資本金300万円・取締役1名で設立できるハードルの低い法人形態として誕生しました。株式会社(当時は資本金1,000万円・取締役3名・監査役1名必須)との差別化が明確だったのです。
廃止の決定打(2006 年)
2006 年会社法は、株式会社の最低資本金を「1円」、役員を「取締役1名」に緩和し、有限会社の存在意義を消滅させました。その結果、有無を言わさず**「新設不可」**となり、既存会社のみが「特例有限会社」として存続することになったのです。
特例有限会社の現在地
| 項目 | 特例有限会社 | 通常の株式会社 | 合同会社(LLC) |
|---|---|---|---|
| 商号 | 必ず「有限会社」表記 | 「株式会社」表記 | 「合同会社」表記 |
| 設立可否 | 新規不可(存続のみ) | 可 | 可 |
| 最低資本金 | 制度当時の300万円を据置※ | 1円~ | 1円~ |
| 機関設計 | 取締役1名のみで可 | 取締役1名~、監査役任意 | 社員(出資者)=業務執行社員 |
| 株式譲渡制限 | 原則あり(公開不可) | なし/制限も可 | そもそも株式なし |
| 上場 | 不可 | 可能 | 不可 |
※資本金は任意で増減できるが、300万円未満に減資しても解散要件にはならない。
特例有限会社を「残す」メリット・デメリット
✔ メリット
- ブランドの継続性
長年の取引実績や地域の信用が「有限会社」の屋号に紐づいているケースは多い。 - 機関設計の簡便さ
取締役1名・任期無制限で再任登記の手間がない。 - 議決権のコントロール
株式公開不可ゆえ、オーナー経営を維持しやすい。
✘ デメリット
- 対外的イメージ
若手人材や海外投資家には「時代遅れ」と映る可能性。 - M&A・合併の制約
存続会社としての吸収合併は不可能(整備法37条)。事前に株式会社へ移行が必須。 - 資金調達の選択肢が狭い
株式公開不可のためエクイティ・ファイナンスは限定的。
株式会社・合同会社への移行手続き
株式会社への移行
- 株主総会特別決議(定款変更・商号変更)
- 解散登記+設立登記(同日申請)
- 登録免許税:最低6万円(解散3万円+設立3万円)
- 関係官庁・取引先へ届出(税務署・社会保険・銀行 等)
合同会社への移行
直接移行制度はなく、「有限会社解散→合同会社設立」の2段階方式。税務面・許認可の引継ぎ難易度が高いため、実務では株式会社経由が多数派です。
実務Tip:
株式会社に移行したうえで合同会社に組織変更するルートだと、登録免許税が二重にかかる点に注意。
M&A・組織再編時の注意点
- 吸収合併の存続会社になれない → 期日の前日までに株式会社への移行登記が必要。
- 株式スワップ:理論上は可能だが、公開不可ゆえ非効率。
- 株主リスト:移行時に最新リストの添付が必須。法務局の補正指示が増えている。
税務・会計上のポイント
| 項目 | 特例有限会社 | 備考 |
|---|---|---|
| 会計基準 | 中小会計要領/会社計算規則 | 移行しても基準選択は自由 |
| 税率 | 普通法人税率(34.59%実効) | 株式会社と同一 |
| 欠損金繰越控除 | 最大10期 | 政策変更により拡大中 |
| 決算公告義務 | 実務上ほぼ求められない | 信用調査対応で開示推奨 |
よくある質問(FAQ)
Q1. いま資本金を1円に減資できますか?
→ 可能ですが、税務署・取引銀行が与信を見直すリスクがあります。
Q2. 将来、再び有限会社に戻すことは?
→ 不可。一度でも株式会社・合同会社へ移行すると有限会社には戻れません。
Q3. 相続で株式が分散しそう。防止策は?
→ 譲渡制限設定で対応可能。遺言信託と合わせて検討を。
まとめ
- 有限会社は新規設立不可。継続企業は「特例有限会社」と呼ばれる
- 手軽さという元々の優位性は消滅。ブランド継承や簡便な機関設計が残存メリット
- M&A・ファイナンスを視野に入れるなら株式会社移行が王道
- 移行コストは数十万円程度。議事録・定款変更・登記のスケジューリングが鍵


