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三菱商事がノルウェーのサーモン養殖事業を買収 ─ グローバル食料戦略を加速

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はじめに:戦略的M&Aが示す食の未来

2025年7月17日、総合商社の三菱商事は、完全子会社Cermaq Groupを通じて、ノルウェーの大手サーモン養殖会社Grieg Seafoodの3事業を約102億ノルウェークローネ(約1,474億円)で取得することを発表しました。本買収は、人口増加に伴う食料需要の高まりや食の安定供給確保に応える戦略として、水産養殖分野への本格参入の一環です。本文では、買収の背景、内容、意義、業界への影響、日本の食料安全保障との関連性について徹底解説します。


買収の背景と目的

水産養殖の成長性と食料安全保障の課題

地球規模で進む人口増加により、安定的な食料供給は喫緊の課題です。畜産に代わる持続可能なたんぱく源として、養殖サーモンは環境負荷が低く注目される存在。特に日本では、サーモンは寿司・刺身の主要な食材であり、需要が極めて高い中、依然として約8割を輸入に頼る状況が続いています(参考:Marubeniの富士山近傍における陸上養殖など)(sustainablejapan.jp, 三菱商事)。

このような状況下で、安定した供給体制構築と海外調達の強化を目指し、三菱商事は養殖サーモン事業への積極投資に乗り出しました。


買収の内容:Cermaqによる3事業の取得

取得対象と規模

Cermaqは、ノルウェー・チリ・カナダを拠点とするサーモン養殖の垂直統合型グローバル企業。今回、ノルウェーのGrieg Seafood(GSF)が展開する以下の3事業を買収します:

  • Grieg Seafood Finnmark AS(ノルウェー北部事業、年間26千トン)
  • Grieg Seafood Canada AS(カナダ西海岸事業、年間12千トン)
  • Grieg Seafood Newfoundland AS(カナダ東海岸事業、年間11千トン)(三菱商事)

買収額と生産量の変化

取得額は、10.2億ノルウェークローネ(約988.3百万ドル、約1,474億円)と報じられています(Reuters)。これにより、Cermaqの年間生産量は現在の約20万トン(GWEベース)から、2027年度には約28万トンへと1.4倍に拡大します(三菱商事)。

業界における影響力

この買収を通じて、Cermaqは世界有数のサーモン養殖企業となり、世界第2位の生産規模を持つ企業に躍進するとFTは評価しています(フィナンシャル・タイムズ)。


三菱商事の狙いと戦略

多角化と食料戦略への舵切り

従来の資源依存型からの脱却を目指す三菱商事は、食とたんぱくへの関心を強めています。安定収益を期待できる養殖分野への参入は、持続的成長を補完する新たな軸として位置付けられます(Reuters, フィナンシャル・タイムズ)。

日本の供給安定化への寄与

サーモン供給を自らコントロールする体制を構築することで、日本国内の食料自給率向上地政学リスクの緩和につながる視点もあります(Reuters)。

M&Aを通じたグローバル展開強化

2025年前半、日本企業は記録的なM&Aを推進しており(M&A総額20.9兆円、案件数2,500件)その一環で行われた今回の買収は、日本の資本が世界の食料サプライチェーンを確保する象徴的案件と見なされています(フィナンシャル・タイムズ)。


保存性とサステナビリティ:環境負荷への配慮と企業メッセージ

環境配慮型たんぱく源としてのサーモン

魚介類は肉類に比べ環境負荷が低く、特にサーモンは飼料効率に優れるため、低炭素社会に資するたんぱく源として注目が集まっています。三菱商事もこの点を強調しています(sustainablejapan.jp)。

持続可能な養殖体制の構築

CermaqとGriegが築いてきた技術・ノウハウの融合により、安全・安心・持続可能な養殖事業体制の強化を図ることが意図されています(三菱商事)。


まとめ:買収の意味と未来展望

三菱商事の今回のサーモン養殖事業買収は、食料供給保障、環境持続性、資源依存からの脱却、グローバル展開の深化といった多層的な意図が結集した戦略案件です。Cermaqの生産能力は1.4倍に拡大し、世界第2位の養殖規模へ。これは、日本企業がサプライチェーンの中核を直接確保する初めての大規模戦略の一つといえます。

今後、各国の環境規制、現地コミュニティとの関係構築、日本への安定供給の仕組み構築など、統合の実行フェーズでの課題と調整が注目されます。ですが、この一手によって三菱商事は食料ビジネス、特にたんぱく源分野における日本の主導的地位を確立する道筋を描いたと言えるでしょう。

この記事を書いた人
MANDA編集部 森田

なにかと課題の多いM&A業界を民主化し、日本の未来を大きく左右する「事業承継問題」を解決することが、私たちのミッションです。M&Aをこれから始める方から、M&Aのプロフェッショナルの方まで、M&A周りを判りやすく丁寧に解説します。

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