2025年の日本企業を取り巻く経営環境は、大きな転換点を迎えています。少子高齢化による市場縮小、人材不足、事業承継問題、デジタル化の加速など、複数の構造的課題が同時に進行する中で、**M&A(合併・買収)およびTOB(株式公開買付)**は、単なる資本取引を超えた「経営戦略の中核」として位置づけられるようになりました。
本記事では、2025年に実際に起きた日本企業のM&A・TOB事例を中心に、背景・狙い・今後の展望を体系的に整理します。特に中小企業経営者、経営企画担当者、事業承継を検討している方にとって有益な視点を重視しています。
2025年のM&A市場全体像
市場規模と件数の推移
2025年の日本におけるM&A件数は、高水準を維持しています。大型案件こそ限定的であるものの、中小企業を中心とした案件数は増加傾向にあります。
特に目立つのが以下の特徴です。
- 上場企業による非上場化(TOB)が増加
- 事業承継型M&Aの一般化
- PEファンド・投資会社の関与拡大
- 地方企業の再編・統合の活発化
これらは一時的な流行ではなく、日本の産業構造そのものが変化していることを示しています。
なぜ今、M&Aが増えているのか
後継者不足の深刻化
中小企業庁の統計によれば、経営者の平均年齢は60歳を超え、後継者不在率は依然として高水準です。親族内承継が難しくなった現在、第三者への事業承継、すなわちM&Aが現実的な選択肢となっています。
上場維持コストの上昇
コーポレートガバナンス・コードの強化やIR対応の高度化により、上場企業であること自体が負担となるケースが増えています。その結果、非公開化による経営の自由度向上を目的としたTOBが増加しています。
事業再編ニーズの高まり
成熟市場においては、新規事業創出よりも既存事業の統廃合・再編が成長戦略として重視される傾向があります。M&Aはその最も有効な手段です。
2025年に実際に行われた主なM&A・TOB事例
以下は、2025年に公表・実行された代表的な案件です。
① 住友電工による住友理工の完全子会社化
自動車部品分野の競争力強化を目的に、グループ再編を実施。開発・調達・生産の一体化を進める狙い。
② 富士通によるブレインパッドの買収
データ活用・AI分野の強化を目的とした戦略的買収。DX需要の拡大を背景に、データ分析人材を内製化。
③ 日本生命による医療データ企業の取得
保険と医療データを連携させ、予防医療・健康支援分野への展開を加速。
④ オリックスによるITインフラ企業の買収
安定収益を生むインフラ型ビジネスの強化を狙った戦略的投資。
⑤ KKRによる人材系企業への投資
人材不足が深刻化する中、技術者派遣・人材サービス分野への注力が鮮明に。
⑥ 地方建設会社の統合事例
後継者不在と人材不足を背景に、地域ゼネコン同士が統合。公共事業対応力を強化。
⑦ 医療・介護事業者のグループ化
高齢化社会を背景に、介護施設運営会社が大手グループ傘下へ。
⑧ ITスタートアップのMBO
上場後の成長停滞を受け、経営陣主導で非公開化を選択。
⑨ 地方銀行グループの再編
経営効率化を目的に、傘下会社の整理・統合が進行。
⑩ 製造業における事業売却型M&A
不採算部門を切り離し、選択と集中を進める動きが加速。
M&Aが企業にもたらすメリットと課題
メリット
- 事業承継問題の解決
- 成長スピードの加速
- 人材・技術の確保
- 経営リスクの分散
課題
- 企業文化の統合(PMI)の難しさ
- 従業員の不安・離職リスク
- 想定外のコスト発生
- 買収後の統合失敗リスク
特にPMI(Post Merger Integration)の巧拙が、M&A成功の可否を大きく左右します。
2026年以降の展望
今後の日本のM&A市場では、以下の傾向がより顕著になると予想されます。
- 事業承継型M&Aのさらなる増加
- 中堅・中小企業の「選択と集中」
- 海外ファンドの日本市場への継続的参入
- ESG・脱炭素を意識した再編
- デジタル・AI分野への投資加速
M&Aは「特別な経営判断」ではなく、「成長戦略の一部」として定着しつつあります。
まとめ
2025年の日本におけるM&Aは、単なる企業売買ではなく、
**「事業を未来につなぐための経営判断」**へと進化しています。
中小企業にとっても、M&Aは避けるべきものではなく、活用すべき選択肢です。
経営者が早期から情報を収集し、専門家と連携しながら準備を進めることが、成功への近道となります。


